第四十三話 信清との決戦
別動隊である十六夜隊が闇に紛れて美濃に潜入、斎藤勢を昼夜問わず撹乱している頃、信長は軍を清洲から進発、東進して犬山の信清討伐を目指した。
信清は美濃勢が来ぬまま、信長が清洲を発った報を受けると美濃勢を待たず犬山を進発、そのまま南下して信長軍と接敵を目指した。
信清は進軍途上で、美濃勢が引き返した事を知ったがそのまま軍を動かし、信長と接敵した。
「殿、あちら織田信清様の旗にございます。」
側近が信長にいうと信清方から騎馬武者がやって来た。
「我こそは!織田信清様の家臣喜介重成なり!誰かお相手願おう!」
「誰か行くものはいないか?誰もよいぞ!腕に自信のある者は名乗りでい!」
信長が家臣や雑兵までに問いかけると、一人の雑兵が出てきた。
「お、お殿様。あっしが出てもよいでしょうか?」
「良いが、腕に自信は有るのか?身なりもそうだが直ぐやられてしまっては面白うない。」
「殿の仰る通りだ!早々に場所に戻れ!」
「だ、大丈夫だと思います。」
信長は真っ直ぐ雑兵の眼を見ていた。
「わかった!良いだろう。」
信長たちが会話していると、信清方の騎馬武者は更なる挑発をしてきた。
すると、信長は今すぐ行くから待っておれ!と強く言って、雑兵を前に出した。
すると、信清方の方から笑い声が聞こえてきた。
騎馬武者も怒りを顕にしながら罵った。
「お主の雑兵みたいな奴が相手だと。」
喜介重成は、馬を動かし槍を雑兵に振り下ろした。
雑兵は槍が近づいて来る瞬間、刀を出し槍の柄から下を斬った。
そのまま馬の顔を殴り横転させ、騎馬武者は直ぐ馬から離れ刀を抜き、雑兵と斬り合いになった。
「その方、ただの雑兵ではないな。」
「ただの雇われ雑兵さ」
雑兵は刀を押し切り、武者は体制を崩し水面に浸かると刀を首筋の所に突き刺した。
武者は負けを認め「この首をとり手柄とせよ」と言ったが、雑兵は首の替わりに兜の紐を外し兜を掲げ勝ったことを誇示した。
その事を認めた信長は、突撃命令を出し足軽、騎馬兵の混戦になった。
信清側も初動動作は遅れたが、騎馬を手前に出し足軽や雑兵を繰り出した。
「弓隊放て!」
矢が五月雨に降ってきて、双方の騎馬兵や雑兵などの首や頭に刺さり、小隊規模の指揮官なども矢で死亡していた。
それでも時勢は信長有利に働いた。
そして、ついに守勢に立っている信清軍の一角が崩れ、一部の兵が恐慌して誤って撤退の命令を下だしてしまった。
陣中本陣にいる信清に一部が勝手に撤退していることを報告したので急ぎ撤退の指示を願った。
「退却の合図を鳴らせ!陣払じゃ!」
信清側からの撤退の合図により、信清軍は完全に崩壊した。
それに伴い、信長軍は追撃を仕掛け、信清側は大損害を出し命からがら犬山城に戻った。
犬山城に着いた際、信清以外に10名程しか城に戻ってこれてなかったのであった。
信長は一時清須に戻り体制を立て直すと、犬山に向けて出陣した。




