第十六話 戦見物
吉法師と法師が城へ戻ると城内は農民が溢れていた。
いつもなら外で畑仕事をしている農民達が城内に溢れていることに疑問を持った吉法師が平手の爺を捕まえると美濃に出兵することになり、農民達に武具を渡して従軍する為と聞かされ吉法師はすぐさま俺も行くと言い出した。
「若様なりませぬ。まだ、成人も年もまだ幾ばくかの子供を戦場に出せませぬ。法師、そなたもだ。」
すると、外から小姓の声が聞こえた。
どうやら平手の爺を呼びにきたようだ。
平手の爺は襖を開けると要件を聞いた。
「は!先ほど早馬が来まして、あと約二刻半後に美濃侵攻の先発隊が来ます。その先発隊に大殿が居るようです。出迎えをするようにと早馬で来ました。」
平手の爺は頷きわかったと伝えると、小姓は失礼しますと言って襖を閉め、何処かえと行った。
吉法師は早速何処かに隠していた刀腰に挿し、槍を担いで部屋から出ていってしまった。
「吉法師様!」
吉法師は法師の呼び掛けにも耳を貸さずに外へと行ってしまった。
何処かへ行っていた平手の爺が部屋に戻ってきた。
「法師、吉法師様が見当たらぬが何処へ?」
法師は先ほどの事を伝えると、平手の爺は怒鳴り声を上げて部屋を出ていった。
出ていったと思ったら直ぐに戻ってきて、殿をお迎えする準備をするようにと言われると、後ろ部屋に控えていた女中らが着替えを持ってきていた。
法師は返事をすると、平手の爺は部屋再度出て吉法師を探しに行った。
「お主たち、下がれ。自分で着替えれる。」
法師はそう言って女中を下がらせるとさっさと着替えて髪結いを済ますと評定の間に続く廊下の所へと向かった。
評定の間で待っていると甲冑姿の信秀が入ってきてあぐらをかいて座った。
「戦の前に吉法師を見に来たのだが?法師何処だ?」
法師は言いにくそうになりながら、喋ろうとした所、評定の間にある襖が思い切り開き正装で登場した。
後ろには平手の爺が居たためだいたいの察しは付いていた法師は喋らなかった。
「父上、遅くなって申し訳ありませぬ。」
「よい、お前の顔を見に来ただけじゃ。よいか、これから美濃へ行く。土岐氏を追い出した斎藤を美濃守護を祭りこれを討つ!では言ってくる!」
評定の間にて、それだけ言うと評定の間を出て行き次の日の朝出陣した。
「法師、先に言ってくる!」
そう言って吉法師は元来の格好に刀、槍を担いで馬に乗り、父である信秀や家臣、一兵卒にも解らないように付いていった。




