春うららか?
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桜舞う、春もうららかな日。
心地よい気温と快晴に恵まれた今日この頃。通学路の桜がもうそろそろ満開となるであろうこの時期。
期待とともに新入学生とその保護者が登校して来る学園内。まあお分かりのように入学式である。早々と友を作り、というか中高一貫のためドッキドキの一年生状態なのは中学生と高校からの入学組ぐらいなもの。
保護者も和気あいあいと井戸端会議ならぬ学園会議中。
そんな新入生にとって晴れの日でもある入学式が行われる学園内、廊下を歩く二人組。
新入生でもなければ教員でもない。ただの高等部の二年生。「歩こー! アルコール!」と口ずさんでいるが別に彼らにとっては、いつもと変わらない日々であることに間違いはない。間違いはないはずである。
「二年生」「二人組」「入学式」で検索! 検索! 検索エンジンは問いません。出来ましたか?
特に面白いことも起きません。無駄な徒労と知りなさい。
「さて、俺たちの出番はいつだっけ?学内説明の時?」
いつもの調子で俺は隣を歩く青年に問う。俺よりも背の高い、と言っても数センチであるが、がその少し目つきの悪い顔をこちらに向ける。女子が言うにはクールな顔。へぇーそうなんだ。この顔がクールなんだと勝手に納得した。
怒っているようにも見えるその顔でこちらを見る。
俺も顔を向けているため見つめあう形になる。男同士が見つめあう。目線と目線が絡み合うと表現したほうがいいだろうか。腐女子が喜ぶことこの上なし、なのか?女子はこういうのにうっとりすると聞くが如何に?
俺は特に感じませんがね。男に何か感じるわけねーだろ。
「そういえば聞いてないな。カズはなんも言われてないのか?」
素面で聞き直される。
「いや、俺は何も。遼、お前のほうが生徒会長とかから話聞いてんじゃないのか?」
首を横に振る。おいおい情報なしかよ。お前、生徒会長(美少女)と仲いいだろ。そこら辺の情報網使えよ。
心の中でそう思ったが口には出さない。出したところで特に変わるわけでもなければ、この場の雰囲気が悪くなるような気がするから。えっ、お前が聞けばいいだろ?
いや、それはちょっと、決して俺がその生徒会長と仲が悪いというわけでないので悪しからず。というか隣のやつにホの字のやつに聞きに行けるか?俺は行けない。
馬に蹴られて死にたくないから。馬じゃないけど実際に思い切り蹴られたけどやばいからあの女、怖すぎる。
頭の中で一人ノリツッコミを繰り広げる。
「どうするか?さすがにまだ入学式始まってないけど先生たちも忙しいだろ。聞けるような人いるか?」
悩みどころだ。先ほどの元気がどこへやら。廊下で頭を抱える男が二人いましたとさ。
おっと、ここでお困りの方々。どうしましたかと声をかけてくれる紳士なおじいさんが現れた。なんてことはありません。ありませんでしたとも。
ひとまず場所についての説明を加えておくことにしよう。
ここは俺たちが通う学園「北央学園」。
学校という媒体は物語やゲーム(ジャンル問わず)であれば、普通の学校やら、異能使いの学校やら、超絶お金持ちだけが通うやら、いろいろな個性をもつであろう夢の舞台になりうる、というのは二次元だけの話。どんなにおかしな状況であろうが、日本人であればひとまずここに所属することになるだろうし、たいていは規則とかなんやらがまとわりつく場所だし大体の目的が集団行動に慣れましょうというそんな場所だ。
ここらで一つ説明でも入れておくとするか。
「北央学園」は中高一貫校の共学で運動部よりは進学に力を加えている学校である。某有名大にも現役、浪人問わずに何人も受かっていることもあり、それなりの学校なのだろう。「自称進学校」とも揶揄されているが。経営母体が悪の組織だったりで生徒を洗脳ということもなければ、国家機密が隠されているということもない。
おかしいほど祭りやらが多いというわけではないが、周辺の学校よりは多いのであろう。特に文化祭などには力を加えている。卒業生も運営やら屋台やらに手を出している時点でその規模が分かるだろう。ついでにクリスマスパーティなるものは存在している。あえて言うが、この学園に宗教的な何かはありません。
こうしてみると、かなり二次元のそれであるのではないかと思ってしまう。なんだよこのトンデモ学園。
運動会ではなく、体育祭であるところとか要注意。運動会は中学校までですよ。あれ?中等部あるから運動会でもいいのか?あれ、まず何の話をしていたんだ。ひとまずいったんここで話を切ろう。
さて、話を戻そう。脱線した話をなかったことにして話を戻そう。戻したところで問題は解決しないが。解決する見込みが生まれると思えないが。シリアスっぽい感じになっているが、廊下に男が二人悩んでいるだけであるが。