諦めないで、会長。まだ勝てるかもしれないんだから。次回、会長敗北。
3
「というお話でした」
校長から許可を得て、信用できる相手、まあ、この場合はそのイベント企画部の上に立つことになるある相手に電話をした。
相手からの反応がない。ただの屍のようだ?
「聞こえてますか? 森会長?」
「君のせいで頭痛が痛い」
どうやら大丈夫ではなさそうだ。
ふだんの彼女からあり得ない様なおかしな発言が出ている。多分今頃頭を抱えて、胃痛も同時に発生していることだろう。
「何でこう、胃痛に悩まされるようなことばかり起こるのでしょうか?」
弱弱しく悲しげにそうつぶやく声が聞こえてきた。どうやら、本当に胃痛にまで来ているようだ。生徒会長は胃痛持ち。
まあ、何でこんな事態になっているのかなんて分かり切っているんだよな。
「あなたが生徒会長だからでしょ?」
電話の向こう側から、ぐはっという断末魔が聞こえた。どうやら今回のは致命傷のようだ。黙とう。とりあえず安らかに眠っていてもらおう。
死因はえっと、梅本による心労と頭痛と胃痛ってところか。
「まだだ、死んではいない。私はここで死ぬ運命ではない。そうだろ? 松本」
おっと、まだファイティングポーズをとるようだ。まだまだ、しぶとい。しぶといなあ。だけど声の様子からかなりのダメージの模様。もうノックダウンでもいいんじゃない?
何となく俺も返しが適当になってくる。
「そうですね。はいはい、そうですそうです。まだ、死ぬ運命じゃない。だってタケッチに告白もできてないですもんね」
「い、言うな!」
キーンと耳に響くレベルで怒鳴られる。怒鳴るというよりも恥ずかしさから声が大きくなったような感じだ。
乙女らしいところのあるうちの生徒会長は竹本の話題を出すと大体しおらしくなる。誰情報ですか? 俺情報です。いや、ほんと、うちの生徒会長は学校とそれ以外のギャップがすごいや。
「た、竹本の話はいいでしょ!」
「いや、竹本も関係ありますよ。あいつもイベント企画部に入れないと。松竹梅の三バカをひとまとめに入れることが校長、ひいては教職員の方々の目的みたいですし」
俺もその三バカの一人に数えられているところが不満でしょうがないけど、まあ、臭いものはまとめて蓋をしようとかそんな感じだろう。
許可を得られれば、色々と面白いことを校長や生徒会長の名の下に大手をふるってできるんだ。それも大規模で、他の生徒も巻き込んで。
少し心がぴょんぴょんしてきた。
……あれ、電話相手から返事が来ない。
「あの、森会長?」
「……める」
はい? 小さすぎて聞こえなかった。
「あの、よく聞こえません。もう一度お願いします」
「せいとかいちょう、やめるぅぅぅぅぅ」
キーンと二度の耳鳴りと共に衝撃発言。それもガチ泣きである。
「ま、待ってください。森会長。まず泣かないで。そして、会長やめるとか言わないで」
どうやら、俺の発言で心のキャパシティーが崩壊したのか、普段の彼女らしからぬ崩壊っぷりだった。慰めるのに、一晩費やしたことをここに記す。
「ぐす、で、どうやって企画部に入れるつもりだ?」
ようやく泣き止んだ会長はそうやって聞いてきた。
「え? 梅本の事ですよ。校長に何でもやっていいって許可出たぞ。さあ、この紙にサインすればお前の思うがままだって紙にサイン書かせれば一発ですよ」
「……松本が一番あくどいかもしれない」
「え? なんか言いましたか」