表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/28

13.精霊術超初級編




 その日の夜。

 トレアが持ってきてくれた夕飯に舌鼓を打った後。

 ファルスが立てたテントの傍でオレとシルフィとリーズは座っていた。

 ちなみに明かりはリーズがあちこちに漂わせた、魔力球の淡い光。

 ホタルみたいで幻想的だった。


「お待ちかねの精霊術講座ー! あんまり時間をかけて教えてても仕方ないから、体で覚えていってもらおうと思ってるよ!」


 これまでの人生で全く縁のないと思っていた精霊術という不思議な力を獲得できると思うとワクワクが止まらない!


 早速とばかりにシルフィはスッと立ち上がり右手を前に差し出す。

 目をつむり、念じ始めた。

 そして言葉を紡ぐ。


「我 風の力の源に願う 汝の力 我が手に集え」


 唱え終わると、手の上に風が渦巻き、シューッと音を立てながら綺麗な風の球体が生み出される。


「手のひらに魔力を集めるとこうなるよ!」

「おおお! じゃあオレも――」

「今はダメ! まだお話終わってないよ」


 OK……今は大人しくシルフィの話を聞くことに専念しよう!


「次! 我 炎の力の源に願う 汝の力 我が手に集え」


 ん? 今度は炎? 風の精霊が炎の力を使えるの?

 そんな疑問が頭の中を過ったけど、シルフィの手のひらに赤い光が集まって、燃え盛る炎が生み出されていく。

 たださっきの風の玉みたいに安定せずにゆらゆらとしたものだった。


「簡単な精霊術は誰にでも使えるよ! だからあたしでも風だけじゃなくて炎も出そうと思えば出せるの」

「ふむふむ」

「だけどあたしは風の精霊だから、これだけの炎でも霊力をたくさん使っちゃうし、安定させるのも難しいの」

「風の精霊であるシルフィが他の属性の精霊術を使う時は必要以上の霊力を使うんだな」

「そういうこと! 人間であるアツシだったらどの属性も平均的に使えるはずだよ」

「なるほど。それはどの属性にも特化していないから……か?」

「すごーい。こういうこと理解できる人間って少ないんだよ?」


 それはゲーム知識の補正がかかっているからじゃないかな? 多分。


「ということでおまたせ! 霊力を放出しようか!」

「お? もう良いのか?」

「うん! もし失敗して何かが起こってもあたしたちが抑えるからドドーンっとやっちゃってもいいよ!」


 実に頼もしい限りだ。


「さっきあたしがやったように風の力をイメージしてみて!」

「ああ!」


 目をつむる。

 そしてイメージしていく。

 手のひらに、風の球体を乗せるイメージを……


「イメージできたらあたしがさっき唱えた詠唱を!」


――我 風の力の源に願う 汝の力 我が手に集え――


 手のひらの上で風が集まる感覚が分かる。

 頭の先、足の先――体中の先端から広げている右手へと何かが走るような感覚だ。

 だけど、手に何かが集まっているのは分かるのだが――


「あれ?」


 手のひらの上には、何も出てこなかった。


「……にーちゃん、ちゃんとイメージできてたのか?」

「ああ……シルフィがやったように、手のひらに丸い風の玉をイメージしたんだけど」

「うーん。アラシ、もう一回やってみて」


 頷いて、さっきと同じようにイメージ、そして詠唱と続けた。

 結果は、何も起こらない。


「手の先に霊力が集まっているのは分かるんだけど、そこから外に放出できてないみたい」

「だったら放出が出来ないってことじゃね?」

「そうなっちゃうね」

「ってことは、オレは精霊術を使えないってことか!?」


 くっ! 霊力がこの手の先まで届いているというのに、そこからは何も起こらない事実にオレは打ちのめされた。


「属性変化ができてないんだよ――えっと、人間の体内にある霊力はなんの属性もないの。だから『力の源』である風の精霊にお願いして、風の力として放出するの」

「ん? でもにーちゃんはお願いしてたよな? でも風にならないのは何故だぜ?」


 オレもそれ、気になる。


「うーん……考えられるのは、アラシの霊力が少なすぎて風の精霊がお願いを聞けるほどの霊力を貰えていないか、逆に大きすぎて――ん?」


 説明をしてくれていたシルフィが突然、誰もいない方向へと振り向いた。

 誰もいないのに、うんうんと頷いたり「そっかー」と相槌打ったり。


「原因がわかったよ! リーズ、ちょっと――」


 何かを思いついたシルフィは、リーズに耳打ちをした。

 そしたらリーズは嬉しそうに頷いて、オレに向かう。


「にーちゃん、両手を前に出してくれ!」

「こ、こうか?」


 なんだろうと思いながらも、両手を差し出した。

 リーズはパチンと、その小さな両手を重ねてきて――


――我 風の精霊の力の源 汝の力とならん――


 短い詠唱が終わる。


「痛ッ!?」


 すると風がオレの両手に纏わりついてくる。

 そして右腕へと風が駆け上り、上腕の所にピリッと痛みが走った。


「ふっふっふっー。契約術、完了だぜ!」

「契約……術?」

「おう! といっても、にーちゃんとおれの霊力をつないだだけだぜ!」

「それってどうなるんだ?」

「うーん。とりあえず、もう一度さっきのやってみるんだぜ」


 何が何だか分からないが、言われたとおりにさっきと同じことをやってみた。


――我 風の力の源に願う 汝の力 我が手に集え――


 すると、さっきは指先に留まっていた何かが、外に出ていく感覚を覚えた。

 風が次々とオレの手のひらで集まっていく!


「お、おお、おおおおおっ!?」


 キラキラと淡い緑色の光球が、オレの手のひらでクルクルと回っていた。

 か、感動だ!


「リーズの霊力を直接流し込んでるだけだよ! 本当は周りに見えない小さな風の精霊がアラシにわたすんだけど、アラシの霊力が思った以上に強くて馴染みにくいんだって言ってたの! だから、大きな力を持つリーズの霊力だったら馴染んでくれたんだよ」

「なるほど?」

「とにかく! リーズの霊力を使えばアラシも風の精霊術は使えるよ! ただ、他の属性はムリかな?」

「そうかぁ……」


 ゆくゆくは炎をボンッと出してみたり、水をブワって生み出したりしたかったんだけどなぁ。

 なんてちょっと残念そうにしていたら。


「言っておくけどにーちゃん、風の力はどの属性よりも強力だからな! 派手さはあまりないかもしれねーけど、力を使いこなせれば空を飛べるようになったり、フィールドバリアを張って水の中とかでも自由に行き来できるようになるし、攻撃力だってすんげー高いんだからな!」

「そ、そうか!」


 風そのもののご本人たちの前で残念にしたのは失敗だったな。

 リーズがぷんぷんと怒っている。

 何にせよ、リーズが言う通り、風の汎用性はバカにならないぐらい高いみたいだ。


「これでアラシは晴れて精霊術士のタマゴになったわけだよ!」

「え、リーズと契約したからいくらでも使えるんじゃないのか?」

「そんなわけないよ! ただ風の力を放出できるようになっただけで、その魔力玉はなーんの役にも立たないからね! 使いこなせるようになるのはまだまだ先かな!」


 そう言いながら、シルフィはオレの手のひらにある風の玉に手を翳した。

 風の玉はシルフィの手に移り――


「我望む 切り裂く力 刃となせ」


 呟くとその風の玉は形を変え、三日月形の刃へと変わり、木へと投げつけた。

 すると、カコンッと乾いた音を立てて木の幹へと突き刺さる!


「なるほど。その後に形を変えたりしていくわけか」

「けど、それが一番むずかしいよ! 放出した霊力を維持しながらもう一度イメージを重ねていくからね。維持できないと、今みたいに攻撃力が思いっきり減っちゃうよ」

「にーちゃんの霊力の強さだったら、さっきので普通に木を切り倒せちゃうもんな!」

「――マジか!」

「うん! だから、これから少しずつ出来るようになっていけばいいと思うよ!」


 失いかけていた自身が、次第に復活した!

 オレは二人の頭を撫でて、ありがとうと言った。


「ところで――」


 にこにこしていたリーズは、呟いた。


「そこにいるの、誰だ?」


 すっと、周囲の温度が下がった。

 かのように思えた――


「なんでぇ、気付いてたのかよガキ」


 ジャリッ――

 背後から、土を踏みしめる音が鳴り響いた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ