流星群
99
日が暮れた後、少しの時間明るい。急いで山へ向かった。山の入り口に着く頃には、足元も見えにくいほど暗くなっていた。
山は…………妙な静けさだった。
「晋さ~ん!晋さ~ん!」
呼んだ所で、返事は無い。
「紅葉~!紅葉~!」
えぇえええええ!!その声はルン!!
「いや、留守番って言ったよね?さすがに怒るぞ?」
「だって、ポロがどうしても行くって言うから……」
どうせこれ、二人がお互いに人のせいにするパターンだな?だってルンが……という声が、聞こえて来ない。ポロ……?
「ポロは?」
ポロの姿が見当たらない。
「あれ?どこ行っちゃったのかな?お墓の方行っちゃったのかな?」
墓に続く道は、親父の墓のある所とは別にある。そっちの道には、唯一街灯が一本あった。そこには…………怯えるポロの姿が街灯に照らされていた。
「ポロ!」
ポロは俺に気がつくと、こっちに駆け寄って来て、ルンと一緒に俺の後ろに隠れた。
グルルル……。
暗闇から獣が喉を鳴らす音が聞こえた。
「晋さん…………?」
獣の声を聞いて、ふと思った。今、目の前にいる獣は…………晋さんじゃない可能性だってある。この山に、晋さん以外に熊がいないとは限らない……。
逃げなければ!!なんとなく…………そう思った。どうにか、ルンとポロを無事に人里まで帰さないと!!
しばらくすると、熊が音を立てずひっそりと街灯の灯りの下に出て来た。俺は…………その熊のある部分から目が離せなかった。首元の……禿げ…………
そう思った瞬間、倒されて肩を噛まれた。
「紅葉!!」
ルンとポロの、泣き叫ぶ声が聞こえた。
「晋さん!!やめてくれ!!晋さん!!」
何度も何度も晋さんの名前を呼んだ。それでも……離してはくれなかった。
晋さんの歯が…………食い込む……!痛い…………。俺、ここで晋さんに殺されるのか?ふと、晋さんの言葉が頭をよぎった。
『もし、僕が僕じゃなくなったら…………殺して欲しい。』
殺せるわけないよ……。到底無理だよ!勝てるわけない……!!俺、ただの人間だし。これからも…………人間でいたいよ!!
シュッ!っと音がして、目映い光が見えた。…………花火?次第に辺りが火薬の臭いで立ちこめてきた。
俺に乗っていた晋さんは、すぐに驚いて山の奥へ逃げて行ってしまった。
よく見ると、ルンがチャッカマンで、ポロの持っていた花火に火をつけていた。ここ…………山だぞ!?他に燃え移ったらどうするつもりだ?!
「晋さんと約束したんだもん。花火するって……。今度は一緒にするって……!!」
ああ…………その約束、晋さんはきっとこうなるって予想して…………
花火が終わると、二人が駆け寄って来た。
「紅葉~!」
「大丈夫?痛い?」
大丈夫だなんて…………言えなかった。大丈夫なわけがない。
「二人とも、助けてくれてありがとう。」
晋さん…………痛いよ。
こんな未来が…………俺にも待ってるなんて思ったら…………
胸が痛いよ…………。
胸が苦しいよ…………。
その日は、星降る夜だった。
流れる星を見ながら、足元の暗い道を歩いた。ルンとポロが支えてくれて、少しづつ歩いた。
空からこぼれ落ちる星は、1つ、また1つと増えていった。どんどんどんどん増えて、まるで星の雨のようだった。
空は美しいのに…………滲んで見える。星が流れ落ちる度に、涙がこぼれ落ちた。
ずるいな…………。なんでだ?こんなに星が流れてるんだ。1つや2つ、願いが叶ったっていいだろ?