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庭プール


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「あー!紅葉みーっけ!」

「やられる前に打つべし!」

「きゃああああ!!」

俺が水鉄砲を噴射すると、二人は慌てて逃げて行った。


庭に新しく買った子供プールを出した。もはや子供プールではなく、大人が入れる大きさだ。水がたまるまで、二人は水鉄砲で俺を狙って来た。狼だろうが、人間だろうが、的になる事は変わりはない。ただ、狼と違うのは……武器を持ち、反撃する事を許される。


ルンとポロは晋さんにバケツで水をかけられて、既に全身びしょ濡れだった。ザパーン!と音がすると、二人の笑い声が聞こえた。


水着を来ていない俺は、Tシャツがびしょ濡れだった。今日は暑くて冷たいTシャツがちょうどいい。晋さんがバケツで参戦していたから、プールの水はなかなかたまらなかった。

「コラー!家の中に向けて水かけちゃダメー!障子が濡れちゃうでしょ~!」

バシャッ!!と、ルンのよけた晋さんのバケツの水が、廊下を拭いていた葵にかかった。

「あ……。」

「やったなぁ~!」

葵が晋さんのバケツを奪って本格的に参戦した。葵はザパザパ晋さんにかけた後、プールの水を手当たり次第にまきまくった。

「きゃ~!あーちゃんが覚醒した~!」


俺が水鉄砲に水を入れていると、ジーパンに水をかけられた。そして、二人はクスクス笑っていた。

「紅葉お漏らしだ~!」

「お漏らし~!」

ジーパンの股の所だけ水をかけられて、漏らしたみたいに見えた。

「キャー恥ずかしい!!見ないで~!!」

俺が顔を隠して恥ずかしがると、二人はゲラゲラ笑っていた。


それを見ていた晋さんが俺のジーパンの腰を少し開けて、バケツの水をゆっくり流した。

「ギャー!漏らした感覚になる~!リアル~!リアルな感覚~!漏らしてないのに恥ずかしい!!」

ルンとポロは爆笑だった。

「みんなそこにいてよ~!」

と、葵の声が聞こえた瞬間、三人がすくに離れて行った。


ジャッパーン!

「あれ?紅葉君だけ?」

葵に思いっきりバケツの水をかけられた。これか!!これが目的か!!

「俺だけ~!!」

三人に嵌められた~!!

「俺だけ~!ってどんだけ~!と似てるよね~!」

ルンがそう言って俺の前に来た。何?それフリ?フリなの?

「どんだけ~!」

言ったよ!言わされたよ!


「あーあ!疲れた~!私離脱~!」

プールの水か溜まった頃、全身びしょ濡れの葵は、着替えに行った。

「着替えて来る間、二人の事見てて。溺れたりはしないと思うけど。」

「了解~!」

俺は着ていたTシャツを脱いで、水を絞って木の枝にひっかけておいいた。この天気じゃきっとすぐに乾く。


俺はそのまま縁側に座って、プールの監視員になった。晋さんが大きな浮き輪に乗って、プカプカ浮いていた。ファ、ファンシー!!

動物園の熊だってあんな愛くるしい姿見せないぞ!?オジサンなのに、あの愛くるしさ……恐るべし熊!!


晋さんは昔、ロケット花火が当たって、花火が嫌いになったらしい。首の所が一部に毛がなく、禿げている所が目に入った。


「お待たせ~!」

着替えた葵がジュースやアイスをお盆に乗せてやって来た。

「みんな~!アイスあるよ~!」

「食べる~!」

ルンとポロはすぐに来た。

「晋さんは?」

晋さんはまだ浮いていた。

「甘いもの好きなのに珍しい。ポロ、溶けちゃう前に晋さんに持って行ってあげて。」

ポロは浮き輪に乗ってプカプカ浮いている晋さんにアイスキャンディーを渡した。ファ、ファンシー!晋さんは上手にアイスキャンディーの柄を持って食べていた。


「紅葉君疲れてない?大丈夫?」

「大丈夫大丈夫。これくらい全然。」

「お神輿担いだらまた犬になっちゃうのかと思ってた。」

葵の反対を押しきって、神輿を担いだ。暑いし重いしキツいし……。でも、見ていて欲しかった。自分の姿を見ていて欲しかった。俺を、覚えていて欲しかった。

「二人に頑張ってる姿見せたかったんだよね?ルンも大きくなったら担ぐって言ってたよ。」

「そこルンなんだ。ポロは?」

「ポロは怖いからやだって。ルンがやるならやってもいいけど?とは言ってたよ。」

そう言って二人で少し笑った。


「本当は葵に見せたかったんだよ。」

「え?」

「この年じゃ、格好いいなとか、好きだなとか思う事ないだろうし……」

すると、葵は大笑いした。

「あはははははは!紅葉君欲張り~!これ以上好きにさせたいの?これ以上好きになって仕事が手につかなかったらどうするの?お天道様に二人の間に天の川流されちゃうからね?」

「そうしたら、またルンとポロにパジャマの紐つけてもらうからいーもん!」

「ルンのモノマネやめて~」

ルンがアイスの棒を持って来た。

そして、俺の食べていたアイスキャンディーを一口噛んで去って行った。

「欲張りがもう1人いた……。」

「そっくりだね!」

「葵にな。ルンは葵そっくりだよ。」

「はぁ?紅葉君でしょ?」


わかってる。それでも、欲張りたいんだ。もっともっと欲しい。葵の心が欲しい。ルンとポロの笑顔が欲しい。


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