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花火


94


ルンが落ち込んでいたから、葵が花火をやろうと言い出した。


織部と晋さんも誘ったけど、晋さんは火薬の臭いと音が怖いようで……家の中の窓から見ていた。


手持ち花火に火をつけながら、織部はルンに訊いた。

「どうよ?二人の仲は?」

ポロはなかなか花火に火がつかなかった。ずっと、ろうそくの火と格闘していた。ルンはしょんぼりして言った。

「さっきね……結婚届書いてたのにね……ルンが溢しちゃったの……。」

ああっ!そこ触れないでやって欲しかった……。

「大丈夫、大丈夫~!俺が役所行って、100枚もらってきてやるから。」

「いや、そこは1枚が優しさだろ?100枚は嫌がらせだ。」

「だって100枚あれば、何枚破られても安心だろ?」

破られる前提か!?そこは数枚で諦めろ!さすがに100枚は諦め悪すぎだ。そもそも誰もそんな鋼のハート持ってねーよ!


「100枚書く根性ないなぁ……。1枚でもめんどくさいのに……。」

葵が呟いた。めんどくさいって!婚姻届めんどくさいって!!

「え……もう書かないの……?」

ルンは泣きそうな顔で葵を見た。

「あ……何枚でも書くよ~?」

「何枚?」

「何枚でも書くよ~?」

すると、ルンは元気を取り戻して笑顔で訊いた。

「100枚?」

「100枚…………?…………書き…………」

「書き?」

「…………ますとも。」

よく言ったな……葵……。


「いやいや、そもそも役所が100枚もくれないだろ。」

「じゃ、何枚くれるんだ?お一人様一点限りか?」

やめろ!婚姻届をスーパーのセール品扱いすんな!

「資源の無駄遣いしちゃいけません。1枚。1枚でいいの。」

「1枚でいいの~?」

葵が何とかルンに納得してもらおうとして言った。

「何枚も出したら、役所の人にしつこい~!って思われちゃうから。ね?」

そうゆう問題でもないと思うけど……。


「あ、ついた!」

ポロの花火にやっと火がついた。ルンの花火にも火がつき、パチパチと音を立てて、暗闇に光の花が咲いた。織部の花火はシュッ!と音を立てて火がついた。織部は次々に置き型花火に火をつけた。火花がどんどん高く上がって、まるで光のカーテンのようになった。

「綺麗だね~!」

「晋さんにも見えてるかな?」

ポロは晋さんのいる窓の方に花火を振った。すると、晋さんは手を振っていた。


俺がろうそくの火で花火をつけようとしていると、ルンが調子に乗って振り回していた花火が前髪をかすった。

「危なっ!ルン!振り回して通るなよなよ!」

「あ、前髪チリチリになってる所ある~!あはははははは!!」

葵が俺の髪を見て爆笑した。

「後で切ってあげるよ。そんな長い前髪してるから燃えちゃうんだよ。」

そう言ってまた爆笑していた。


「最後はやっぱこれだろ~!線香花火!」

織部は時短と言って、束をそのまままとめて火をつけた。

「ちょ……それ、すぐに玉が落ちるだろ。」

束の線香花火は、1つの大玉になってグツグツいっていた。何度も何度も火の玉が落ちて、それでも、燃え続ける。

「なんか…………風情がないのに…………目が離せない!!」

わかる!!風情はないけど、見てしまう!グラグラ燃えたぎるマグマを見ているかのような感覚になった。


「普通、花火の後ってしんみりするけど、この線香花火見てると…………満足!!って感じになるね。さ、中入って寝ようか。」

「はーい!」

「あ、歯磨きちゃんとしてね~!」

そう言って家の中に入った。

「花火、楽しかったね!」

「綺麗だったね~!」

「僕、グツグツしか思い出せない。」

ルンとポロには、一束線香花火が衝撃的だったらしく、完全に持っていかれた。風情はどこ行った?


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