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水風船


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晋さんが痩せて来た。それは…………プールから帰って来た二人が、お昼ご飯までの時間をもて余していて、水風船でサバゲーをやるようになった……

「ポロ!晋さんそっち行った~!」

「紅葉みーっけ!」

「ギャー!見つかった!!」

当然、水風船を持てない俺達は、ただの的になった。


ギャー!動物虐待!!バシャッ!っと豪快な音を立てて水風船が割れた。うわっ!!どんだけ水入れてんだよ!ギリギリに避けたら、目の前で水風船が割れて、自慢の腹の毛が濡れた!!


畑から帰って来た葵が、水風船を両手に持った二人を見て、二人を叱りつけた。

「コラー!!」

「葵~!助けて~!動物虐待だよ~!!」

「二人とも夏休みの宿題やったの~?!」

あ、そっち?


「今からコツコツ計画立ててやらないと間に合わないよ~?!」

そうだそうだ~!子供は宿題をやれ!そう思って葵の後ろに隠れようとすると、しっぽを掴まれた。

「紅葉君も!二人と遊んでばっかりいないで勉強させて。」

えぇええええええ!!遊んでばっかりって!俺、イジメられてたんだけど!!


「ただでさえあの二人……通信簿散々だったんだから……。」

いやいや、この年で勉強できないって……ヤバいだろ?!

「今日の分の夏休みのドリル終わったら、おやつにかき氷作ろうね~」

「やった~!!」

「お昼ご飯今から作るから、出来上がるまで勉強ね!」

かき氷にテンションが上がった二人はあからさまに勉強でテンションが下がった。


「紅葉君、教えてあげてね。」

そう言って葵は俺の頭を撫でて、台所へ行った。

「よし、俺に任せておけ!!」

と…………意気込んだものの…………


「暑い~暑くてやる気出ない~」

扇風機を最強にしていても、生ぬるい風を感じるだけだ。

「これじゃやる気も出ないよな……。エアコンのある部屋でやるか?」

「ええ~!それじゃ、涼しくて宿題やらなきゃいけないけなくなるじゃん!!」

とにかくやりたくないんだな……。


「じゃ、宿題いつやるんだよ?」

今でしょ!?どっかの先生がよく言うだろ?今でしょって!!


「早く宿題を出せ!!さもないと…………噛む!!」

「紅葉サイテー!ギャグタイだよ!」

「ギャグじゃねーよ!ギャクだよ!」

「逆?逆じゃないよ!」

話が通じない!!怒ったルンは首の毛を引っ張った。


「痛い!痛い!痛い!!ヤメテ!離して~!!」

俺とルンが喧嘩していると、ポロは晋さんに教えてもらって、ドリルを進めていた。

「見ろ!ポロはもう進んでるぞ?」

「ルンはポロより早いもん!!」

「だからってサボっていい事にはならないだろ?!それじゃルンはウサギになるぞ?!」


完全に喧嘩腰になってしまった。

「ウサギいいもん!可愛い~もん!」

「ポロが亀ならルンはウサギだ!寝てるうちに追い抜かれるぞ?」

「いいもん!ポロと一緒ならそれでもいいもん!紅葉のバカー!大嫌い!ハゲオヤジ!!」

そう……捨て台詞を吐いて、寝室に籠った。


ドアの閉まる音が響いた後、しばらく扇風機の関節がギシギシ鳴る音だけが聞こえた。そんな中、ポロが呟いた。

「僕…………亀…………。」


全然ハゲて無いし!フサフサだし!!夏は暑苦しいくらいのフサフサだし!!


「何?喧嘩?紅葉君…………何喧嘩してるの?勉強教えてあげてって言ったよね?」

「いや、あの、これは…………」


「僕のせいなんだ……。僕が遅いから……。」

ポロが泣き出した。

「ルンはいつも僕の事待ってくれてるんだ。」

「待ってる?どうして?」

「一緒にいられないから。」

ポロの話を聞くと、どうやら学校で、算数のできる子とできない子でレベル別に教室が別れる事になったらしい。その事にルンには納得いかず……わざとゆっくりやったり間違ったりして、ポロと同じになるよう合わせているらしい。


「ルンはね、ポロよりずっと早くにゴマ団子もゴマ饅頭も覚えたんだよ?」

「ゴマ団子?なんだそれ?」

「手遊びで計算覚えるやつだよ。二人がよく唱えてたでしょ?1と4でゴマ団子。2と3でゴマ団子って。」

ああ……あれ計算覚えてたのか。


いや、この際ゴマ団子はどうでもよくて、ポロに合わせるために手を抜いてるって事だよな!?それで良いわけが無い!!俺が行って…………痛い!!キャイィン!!思わず犬みたいな声が出てしまった!葵に首の毛を掴まれた。


「紅葉君が行くとまた喧嘩になるから……。私が行く。ちょうどお昼ご飯出来たし。」

葵の目が…………犬になって使えねーのに、さらに仕事増やしてマジ使えねーな!と言っている!!まずい!!俺、ピラミッド型社会での最下層にいる!!


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