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パジャマの紐


87


七夕はとっくに過ぎたのに、織姫と彦星は、パジャマの紐をたどって、天の川を越えた。


次の日朝、朝の挨拶より先にルンが訊いて来た。

「二人で寝た?」

「ぶーーーー!!」

俺は飲んでいた麦茶を吹いた。

「汚っ!紅葉君、動揺しすぎ。」

「一緒に寝たよ~?だって繋がれちゃったんだもん。」

いや、逆によく平然と笑顔でそれ言えるな……。

「これ、いつまでつけてればいいんだ?今日、俺は田んぼの草取り、葵は畑で作業のつもりなんだけど……。」


すると、ポロがハサミを持ってきて俺達の紐を切った。いや、あれだけ切るなって言ったのに……。

「二人で一緒に寝たならもういいよ。」

「え…………?なぁ、ちょっと聞くけど、どうして俺達を一緒に寝かそうとしたんだ?」

「え?もしかして切って別々に寝たの?」

二人は疑いの目でこっちを見た。

「あ……いや、切ってないよ。切ってない。切ってない。」


パジャマの紐が、両端もう数十センチづつ、短くなった事は…………二人だけの秘密だ。


「あのね、夏子先生、お腹に赤ちゃんがいるんだよ?」

知ってる。夏子先生はルンとポロの担任だ。若い先生で、冬に子供が生まれる予定らしい。

「だからルン、夏子先生に、どうしたら家にも赤ちゃんが来るの?って聞いたの。」

「やだ!!そんな事聞いたの!?夏子先生なんて答えたの?」

ギャー!!まただ!!また赤ちゃん欲しい熱が!!


「お父さんとお母さんに相談してみてねって。」

丸投げか!夏子!!

「夏子先生、お父さんとお母さんが仲良しだと来るって言ってたけど、どれくらい仲良しかわからなかったから、どれくらいか聞いたら……」


まだ続くの?この話?

「一緒に寝るくらい?」

二人は頷いた。正解でも不正解でもない絶妙な回答だな夏子……。

「ケンちゃんの家はみんなで一緒に寝てるって。」

「ノアちゃんの所は別々だって。」

そんな情報聞きたくないです……。スピーカーは二人だけじゃないんだな……子供に下手な事は言えない……。


「うちも別々だから、一緒に寝てもらおうかと思って……。」

「わかった。でもね、もう繋がなくていいから。別々に寝てても、紅葉君と私は凄く仲良しだし。それに……夏は一緒だと暑いしね!暑いのは嫌だし。」

「わかる~!ポロと一緒だと暑いもん!」

さすが。やっぱり葵は子供を納得させるのが上手い。


「え~!僕だってルンとじゃ暑いよ!」

「ほらほら、喧嘩してないで早く学校行かないと遅刻するよ?」

「はーい!行って来ま~す!」

二人が玄関で靴を履いていると、葵がふと気がついて、二人に釘を刺した。

「くれぐれも、昨日は私達二人が一緒に寝たんだよ~!とか、みんなに言いふらさないでね?」

「なんで?」


「私達が仲良しなのは、みんなよ~く知ってるから。知ってる事はみんなにお知らせしなくていいの。」

二人は黙って少し考えいた。そして、考えるのを途中で放棄して、軽く言った。

「うん、わかった。」

絶っ対わかってないな……。


靴を履き終えた二人は元気に学校へ向かった。台所で朝食を食べていると、二人の声が外から聞こえた。

「おばあちゃんおはよう!」

「ルンちゃん、ポロちゃん、行ってらっしゃい。」

「みんな知ってると思うけど、昨日、あーちゃんと紅葉一緒に寝たんだよ!」

そんなの知るか!!


釘を刺した意味が無い!!皆無!!むしろ逆効果!!

「ぶー!くくくくくく……」

晋さんが大笑いしていた。

「恥ずかしい……。」

葵が顔を隠して言った。


「やっぱりダメか……。またおばあちゃん達に子供はまだかってプレッシャーかけられるよ……。」

何そのプレッシャー?!まだ結婚さえしてないのに……?


そこへ電話が鳴った。


「やだ……きっとまた学校からだ……。」

葵はため息をつきながら、電話に出た。そして、電話を切ると、すぐにこっちへ来て言った。


「晋さんの家族、お盆に来るって!」

「本当か!晋さんやったね!家族にまた会えるよ!」

晋さんの手から、箸が落ちた。

「…………。」

晋さんは、ずっと黙っていた。


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