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田植え


70


怒ってる?……怒ってるよね?


「…………。」


朝から田植えの準備をしている葵が…………全然喋らない。


「…………怒ってる?」

「…………別に?」


出た~!エリカ様ばりの、別に?出た~!!怖いよ~!めちゃくちゃ怖いよ~!


殺伐とした雰囲気の中、田植えが始まった。葵は1人で借りて来た田植え機を動かしていた。田んぼの形が四角じゃないから、隅の方は手で植える。稲の苗を母は等間隔でさっさと植え終えて、俺と晋さんの所に来た。


雰囲気を察して母が言った。

「困ったわねぇ~。やっぱりミミズかしら?」

雰囲気を察して晋さんが言った。

「ミミズだろうね。」

「それはわかってるよ!それは、何度も謝ったんだけど……。」

「あんた、何度も謝ればいいってものじゃないのよ?」

いや、じゃあどうしろと!?

「女はやっぱりブランド物のバッグかしら?」

それは母さんの趣味嗜好ね。

「僕の妻はお花やお菓子を好んだよ?」

ちょっ!晋さん奥さんいたの!?


「紅葉君!補充用の苗持って来て~!」

「了解!次代わるよ葵!」

「いい!」

何でそんなに意地を張るんだよ~!俺が苗を運んで行くと、無言で機械にセットして黙々と作業を続けた。


そして、あっという間に昼になった。なんだろう……。今日はルンとポロが学校でいないから……静かだ。いつもより余計に、トンビの鳴き声が大きく聞こえる。ピーヒョロロ、ピーヒョロロ気になる……。


「紅葉君のお母さん、お手伝いありがとうございます。」

「やーね!手があるんだから手伝うのは当たり前よ。あ、そうだ!挨拶にはいつ行くの?」

「挨拶……?」

「結婚するなら、葵さんのご家族にも挨拶しないと。」

お茶を入れていた葵の手が止まった。あ…………そうだ!家族の話は地雷だった……。そうか!!これか!!え?これなのか?


「いや……まだ……。」

「こうゆうのは勢いよ?私、しばらく残って子供達の事預かるから、行ってらっしゃいよ。どうかしら葵さん?」

それは…………嫌って断りづらいだろ?それはずるいよ母さん。

「そうですね。実家に連絡してみます。」

え?あっさり承諾?じゃあ、実家の事じゃないの!?え?そうなの?もうわかんねぇえええ!!


俺が頭を抱えていると、ルンとポロが学校から帰って来た。

「ただいま~!」

二人は軽トラックの助手席にランドセルを投げ込んで、ほとんど苗で埋まった田んぼを見てポロは感動していた。

「すごーい!」

ルンは遊び場が減ったと思ったのか、つまらなそうだった。

「もっと泥遊びしたかった~!」

「じゃあ、少し植えてみる?」

「いいの?」

葵は少し考えた。二人が田植えをする→泥だらけ→洗濯物増加。確実にそう考えたよね?


「じゃあ、端の方植えてね。」

「はーい!」

ルンとポロは服を脱いで、下着姿になって、田植えを始めた。ポロは泥にハマってすぐに身動きできなくなった。すると、晋さんがポロを引き上げていた。晋さん、何?その手慣れた感じ?もしかして、ドジョ子捕まえる時もそんな感じだった?一方ルンは素早く走り、泥に足を取られて転んだ。あっという間に全身泥だらけになっていた。

「ばーばが教えてあげる。3、4本をこのくらい、等間隔に刺すの。」

「ばーば、この辺?」

「もうちょっと空けようか?」

ルンはもう少し離して苗を泥に刺した。

「出来た~!もっともっとやる!」

そう行ってルンはどんどん植えて行った。その後に続いて、母さんがルンの植えた苗を植え直していた。ルンの植えた苗は、斜めに刺さっていたり、苗が横たわって浮いていたりしていた。


ふと、ポロは?と思って見ていたら、既に泥にハマり過ぎて、身動きできず泣いていた。それをまた晋さんが救出していた。ポロはもう脱落だな。ポロは下着を脱いで服を着た。

「ポロ、じゃあ、片付け終わったら川釣りに行くか?」

「うん!僕、ミミズ持って来る!」

待て待て!ミミズは…………今は…………


「こっちは任せて、釣りに行って来たら?」

「あーちゃん行かないの?」

Tシャツから頭を出しながら、ルンは言った。

「ミミズがちょっと……。」

「あ、じゃあ、そっち頼んでいいかな?」

「うん、楽しんで来てね!」


何だか気が引けるけど、ここは開き直って川釣りに出掛けた。

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