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ドジョウ


66


やらかした!吉野に口止めしとくの忘れてた!久しぶりに携帯を見たら、SNSにしっかり呟かれてる!!先輩が実は狼男☆って…………意味が違って来るだろうが!!俺、節操無しみたいじゃねーか!!


SNSには、吉野と宮本さんが、入籍した事も書いてあった。後から来た亀に、目の前でゴールをかっさらわれた気分だ。いや、俺狼だし……ウサギじゃないし……


「どうしたの?」

俺が葵の方を見ると、そう言われた。堀田に連絡して葵の指輪のサイズを聞いたものの、田植えに忙しくてそれどころじゃない。

「吉野と宮本さんが結婚したってさ。」

いや、どっちが大事かって、そりゃ指輪だけど……。人間でいられる時間はなるべく葵との時間も欲しい。

「そうなんだ~!良かったね~」

「本当に良かったって思ってる?」

何だか根にもってそうだな……。

「思ってるよ!ただ、隣の畑はよく育っていいなって思っただけ。」

刺さる刺さる~!

「よし、準備OK!今日もお弁当持ったし!行こう!」


今日も天気が良さそうだった。代掻きをして水の調節をした田んぼは、3日間置いて落ち着かせるらしい。その間、苗植えをやろうと、畑にでかけようと準備していた。

「あれ?ルンとポロは?」

「さっきまでここに……庭で遊んでない?」

「いないみたいだけど?晋さんもいない。」

葵は荷物を持ちながら言った。

「先に行っちゃったのかな?おかしいな~ルンがお弁当持たずに行くなんて」

俺は葵の持っていた荷物を取って、肩にかけた。

「お弁当より興味ある事があるんだろ?」

そう言って外に出ると…………


泥まみれの二人が庭にいた。葵の驚愕した顔に、二人はしまった!という顔をした。


「どこをどうしたらこの泥だらけ…………」

葵はふと、気がついた。

「あー!もしかして、田んぼに入った!?」

二人は黙ってばつが悪そうに頷いた。

「せっかく代掻きしてならしたのに……。」

「どうするか?やり直す?」

「田んぼの様子次第かな……。」

二人は肩を寄り合わせてびくびくしていた。

「…………ごめんなさい。」

さすがのルンも今回はすぐに反省したようだった。


葵はため息をついて言った。

「田んぼは今お休み中だから、荒らさないでね。ポロ、ズボンは?」

そういえば、ポロはズボンを履いていない。

「見て見て!ポロのズボンに捕まえたの!」

二人が見せてきたのは、両裾を縛って袋状にした、泥の入ったパンパンのズボンだった。

「昨日、見つけたんだけど、捕まえられなかったから。」


昨日捕まえられなかったから?今日捕まえるの?お前ら…………その、生き物を見つける→捕まえる……。そのスタンス揺らがないな!


葵がズボンの裾をほどくと、泥水が出て来た。すると、くねくねとうねっている、ヘビのようなものが出て来た。葵は驚いて、思わずズボンを離した。

「ギャ!ヘビ!?」

「あーちゃん、これヘビじゃないよ~!」

葵はドン引きしてその場から後退りした。

「ウナギ?」

「いや、髭があるからドジョウじゃないのか?」

「ドジョウ!?ギャー!気持ち悪い!!」

驚いている葵の姿が新鮮だった。


「大丈夫大丈夫。ドジョウに毒はないから。」

「そうゆう問題じゃかいから!」

「これ、食べる?」

俺はドジョウを掴んで葵の方へ持って行った。

「嫌~!紅葉君、いいから、それ、こっち持って来なくていいから!」

田舎暮らしが気に入ってるクセに、葵はカエルやヘビが苦手らしい。俺は二人にドジョウを渡すと、バケツを持って来て、二人に言った。

「でも、マムシとかじゃなくて良かったな。二人とも、ヘビには気をつけるんだぞ?」

田舎じゃ血清が間に合わないと、死ぬ事だってある。

「ヘビに噛まれたり、蜂にさされたり、植物でかぶれたりしたら必ずすぐ知らせるんだぞ?」

「はーい!」

二人はしっかり返事をして、ドジョウをバケツに入れた。

「二人とも、とりあえずシャワーで綺麗にしよう?」


葵が二人を風呂場へ行かせようとすると、草むらの陰から泥だらけの熊が出て来た。

「ドジョウ探してたら、おじいさんに見つかってしまって……。」

晋さん!そんな、田んぼで熊の鮭取りみたいな事してたの!?

「ほらほら、みんな、お風呂に行って。晋さんも。」

葵は二人と一匹を風呂に入れ、その間、俺はドジョウのバケツに水を入れて、風呂場までの床の泥を綺麗に拭いた。


二人はピカピカになって、また外に出て、走り回っていた。畑に行けばまた、泥だらけになるんだろうなぁ。洗濯物の量に葵は愕然としていた。

「俺も手伝うよ……。」

「ありがとう。とりあえず、田んぼ見に行こうか……。」

そして、葵は着替えた晋さんを見て言った。

「晋さんが見つかったのって、この赤いTシャツのせいじゃない?だから、これ目立つって。」

「いや、親父のTシャツ赤ばっかりで……」

「今度着替え買いに行こうね……。」

あ、今ダサいって思った?それ、ダサいって事だよね?


こうして、葵は晋さんに目立つダサい赤いTシャツを着せて、田んぼを見に行った。

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