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言われたい


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そこは…………ポロと二人で、親父を埋葬した場所だった。


やっぱり……。


雲間から月が覗くと、そこには小さな背中が、月明かりに照らされていた。

「…………ポロ。」

どう…………声をかけていいかわからなかった。

「家に帰ろう。ルンと葵が待ってる。」

「どうせ……僕は……」

どうせ…………?

「どうせ?どうせ僕は何なんだ?」

そう訊いて、いい答えが返って来ない事ぐらいわかっていた。


「どうせ僕はいなくなるのに……どうして探しに来たの?」


そんな事…………言わなきゃわからないか?ならちゃんと言ってやる。


「ポロ、お前を愛してるからだよ。」

「紅葉、ロリコンなの?」

「そーゆー意味じゃないって。」

しかし、ポロはどこでそんな言葉を…………高確率で織部だな。

「そーゆー人を変質者って言うんだって。オリベが言ってた。」

ほらな、やっぱり。

「紅葉、変質者なの?」

「どこの子供が親に向かって変質者とか言うんだ?」

「親って…………僕達の言った事、本当に信じるの?」

俺が……二人を信じてないとでも思ってたのか?愛情というのは、案外伝わっているようで、伝わってないのかもしれない。


「あーそうだよ。俺はバカだよ!どうせいなくなる子供を、本当の子供だと思い込んで溺愛するような大馬鹿者だよ。」

「紅葉は大葉じゃないよ!」

「大馬鹿な?自分で訂正すると悲しいんだけど。」


俺はポロの頭に手を置いて言った。

「なぁ、ポロ、ポロはどうせ死ぬからって言って、チビを見捨てるのか?」

俺に頭に手を置かれたまま、ポロは首を横に振った。

「どうせ大人の鶏と暮らすから、その頭を撫でてやらないのか?」

ポロはまた、首を横に振った。

「どうせ化け物の子だから、生きる価値は無いのか?」

ポロは泣き出した。

「そんな……そんな事……やだよ……。」

「俺だって、そんなのやだよ。」

俺は泣きじゃくるポロを抱き締めた。

「なぁ、ポロ、誰かに、いいよ、いいよ。それでもいいよって言ってもらいたいよな?それでもいいから…………それでもいいから生きていて欲しい。そう…………言われたいな。」


しばらく、ポロが泣いていると……妙な静けさが辺りを包んだ。嫌な予感がした。狼だったら、もっと早く気がついたのかもしれない。


そこには…………その暗闇には…………熊だ。熊がいる。やっと気配に気がついた。


えーと、野生の熊に遭遇したらどうするんだっけ?


俺はポロをゆっくり抱き抱えて、後退りした。

「待って下さい!」

「え…………?」

待て?誰に話かけられた?俺とポロは顔を見合わせた。

「ポロ、今喋った?」

ポロは首を横に振った。そうだよな?ポロじゃないよな?

「え…………あ…………」


「待って!逃げないで!」

いや、逃げるでしょ。逃げるよね?野生の熊と出会ったら絶対逃げなきゃダメだよね?

「その固定観念を捨てて下さい!僕も……言われたいです!!」

え…………?

「いいよ、いいよ。それでもいい。そう言われたいです。」

「家に…………行くか?」

俺達は、何故か熊と一緒に、山を降りた。


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