ヒヨコ
お花見と友達
53
「紅葉~!大変大変!」
「どうした?」
「チューリップが咲いてる!」
大変って…………花?
「見て見て!あーちゃんと植えたチューリップの球根がこんなにおっきくなって、こんなに綺麗に咲いたよ!」
俺は縁側のある廊下に座ると、庭のチューリップとルンを見ていた。
「良かったな~。この前まいた種も、秋にはお米になるんだもんな~植物って凄いよな~。ルンは種を蒔いてて楽しみだっただろ?」
「うん!お米楽しみ!早く秋が来ないかな~って思った。」
早く……秋が来ればいいか…………。
そう思っていたら、ルンが膝の上に来て言った。
「うんん。やっぱり、秋にはのんびり来てもらいたい。」
「どうして?」
「だって、春は苺でしょ?桜餅に、さくらんぼでしょ?あと、いちじくも!夏はかき氷とか流しそうめんとか、焼きそば、きゅうりとか、甘いミニトマトも……それから、それから……」
ルンは自分の楽しみな食べ物を並べた。俺はそれに少し笑った。
「あははは。それは楽しみだな~。」
そして、膝に乗せたルンと歌を歌った。
「咲いた~♪咲いた~♪チューリップの花が~♪並んだ~♪並んだ~♪赤、白、黄色~♪」
ルンは綺麗に咲いたチューリップにご機嫌だった。
「あれ?そういえばポロは?」
いつもの片方がいない事に気がついた。
「多分チビの所。ポロ、最近先生に怒られてから凹んでるんだよ。」
先生に怒られた?何したんだ?俺はポロの方を見た。ポロはこたつに頭を突っ込んでいた。
「ポロね、ランドセルの中身全部出して、ランドセルの中にひよこ入れて登校したの。」
えぇええええ~!
「その、ひよこはどっから?」
「拾ったって。」
いやいや、犬とか猫とかを拾うのはわかるけど、いくら田舎だからって…………ひよこ拾う事があるか?
どうやらポロは、勉強はそっちのけで、拾ったひよこにメロメロらしい。
そして、夕飯時にこう言い出した。
「僕、ひよこと一緒に寝る。」
「いやいや、ポロの寝相じゃ潰されて死んじゃうから!」
すると、ポロは食べかけのポテチの袋を持って来た。
「僕のおやつあげる。」
「待て待て!そんなもんあげたら死んじゃうから!」
愛情のかけ方がわからないんだな。見た感じ2週間経ってないひよこだ。保温庫もないし、このままだと死ぬ可能性の方が高い。とりあえず、葵が段ボールに入れて、こたつに入れさせていた。だからこたつに頭を突っ込んでたのか……。
「ポロ、ひよこはお母さんの所に帰してやらないか?」
俺の提案に何故かルンが言った。
「ええっ可哀想だよ!」
ええっ!可哀想?!何故!?
「だって、ポロ、この子以外に友達いないのに……。」
それは…………それは、ポロの方が可哀想って事かーーーー!!
ルンとポロが入学して2週間、ルンは初日でクラス全員と友達になっていた。全員と言っても8人だけど……。ポロは一向に友達を作ろうとしない。話をしても………
「僕にはルンがいるからいい。」
そう言って去って行った。
ポロには大きなお世話かもしれないけど…………俺は、織部がいてくれて正直、救われた事もある。
「はい、コーヒー。あ、もしかして、ポロの心配してる?本当に心配性だね。心配しなくても、そのうちできるよ、友達くらい。少ないクラスだし。」
葵はそう言っていたけど……少ない人数だからこそ、合わないと学校に行きづらくなるんじゃないか?
友達と遊ばず、ひよこを溺愛するポロが心配だった。
その事を織部に話をしたら……。
「さすが、里梨の子供だな~!ぼっちの子はぼっち!」
「蛙の子は蛙って言いたいかよ?あーそうだよ。俺もぼっちだったよ。」
「ま、伊沢さんの意見に賛成だな~里梨、何焦ってんだよ。もうすぐ遠足とかイベントあって仲良くなるだろ。まだ2週間、これからだろ?」
確かに…………。俺が焦り過ぎなのかもしれない。
「で、焦って入学式でプロポーズか?あはははははは!マジでウケるわ!」
それ、まだ笑うか?
「もう一度ちゃんとするんだろ?」
「それは…………」
その時は、するとはハッキリ答えられなかった。