戦利品
5
こうして俺達は、バレーボールより一回り小さい戦利品を持って、家へ帰ろうとした。
「あ、紅葉にも、これあげる。」
「は?」
ルンに、突然、キャラメルを口に突っ込まれた。この甘さ…………懐かしい……。
「一個だけだよ?虫歯になるからね。」
まったく…………どっちが世話焼かれてるのかわからなくなってきたな……。
に、しても、キャラメルって食べづらい。ヨダレが出る。
「あれ?みたらし団子足りない…………?」
スーパーの前に出ていた出店の店員がそう言っているのが聞こえた。なんか…………嫌な予感……。
「帰ろう!今すぐ帰るぞ!!」
そう言うと、俺は走り出した。しかし…………
「重いよぉ~!ルン、手伝ってよ~!」
「待って!ポロのキャラメルも開けてあげる。」
「ありがとう。」
何のんびりしてんだよ!こっちは急いでるんだよ!!疑われる前に逃げないと……!
「あ……!」
ポロがキャラメルに気を取られていると、ビニール袋の中のメロンが転がった。俺はそのメロンを咥えて二人を置いて走った。
「あ!待ってよ~!」
足…………遅っ!!スーパーの前から離れてしばらくすると、ポロの足が止まった。
「疲れちゃった。僕、もう歩けない。」
えぇえええええ!!ど、どうすればいいんだ?
「ポロ、キャラメルで元気出して。」
「だって一個だけだって……。」
「いいよ、いいよ。それでもいいよ。」
何だ?それ……おまじないか?ルンはもう1つ、ポロの口にキャラメルを入れた。
「……ありがとう。」
ポロは涙を拭きながら、キャラメルを食べた。
そりゃそうだ。結局ろくな食事をしていない。力が出なくて当然だ。開き直ってあそこの出店で団子でも買って食べさせれば良かった……。
「紅葉、メロンそのまま食べちゃ駄目だよ?」
食わねぇよ!メロン丸ごと、丸飲みにできると思ってんのか?狼なんだと思ってるんだよ?
俺は、メロンを地面に置いて言った。
「メロン持て。少し背中に乗せてやる。少しだからな?」
「いいの?やったぁ!」
おいおい、急に元気じゃねぇか!さっきのは何だったんだよ……。
「ルンも~!」
え?二人とも!?
幼児推定約20㎏×2+メロン800g=約40.8㎏
乗っけてみたものの…………ものの?もののけ?あれ?これ、俺、あの映画に出て来る山犬の図じゃね?いや、俺あんなにでかくないし!多分、あってもセントバーナードぐらいじゃ…………いや、だから俺犬じゃないし!
「せめて交代でお願いします……。」
「はーい!」
片方がメロンを持って乗って、片方が支えながら歩く。それを20数える間歩いて、その都度乗り手と支えを交代して歩いた。大人が10分で歩ける距離を一時間かけて帰って来た。
疲れた……。家についたら、急に脱力感が襲って来た。もう、食事はピザでも注文しよう……。携帯、携帯……。そう思って携帯まで、はいずり進んでいたら……俺の目の前に、二人がやって来た。
「紅葉!これ、紅葉の分だよ!」
そう言って、ポロは缶詰めを1つ差し出した。
「俺の分…………?」
何だか…………涙が出そうだった。子供二人だけで心細かったろうに、俺の事まで気にしてくれて…………
涙ぐみながら、その缶詰めを見ていると、猫の絵柄がついていた……。ん?これ、猫缶?
違う意味で泣きそう……。
これ、動物の餌……!!いや、100歩譲ってそれは仕方ないとしよう。この身成だ。そこは真っ当な気遣いだ。でもこれ、猫の絵ついてるよ?明らかに猫用だよね?俺、犬よ?いや、犬じゃねーし!
いやいやいや!開けなくていいから!…………ご丁寧に開けて、皿の上に乗せてくれた。
「ほら、紅葉。お腹空いたでしょ?ご飯だよ。」
「紅葉のご飯だけは買えて良かったね!」
もしかして…………俺は普通の食事が食べられないと思って、買い物に出かけたのか?もしかして、俺、飼い主に置いて行かれた可哀想な喋る犬だと思われてる?
「あの…………その…………」
「食べないの?」
猫缶を食べる◀️
猫缶を食べない
キレる
もう一度、猫の餌を見た。
「…………。」
猫缶を食べる
猫缶を食べない◀️
キレる
「俺、動物の食べ物はちょっと……。」
「え…………。」
二人のショックを受けた顔と言ったら…………ポロは泣き出した。
「あぁ!ごめん!ごめんなさい!食べます!食べます!」
俺は思いきって猫缶を食べた。…………うぉっ!生臭っ!…………でも、思ったよりは不味くない。いや、でも不味いよ!全然不味いよ!!
「どお?」
「…………あ、味が薄いかな……。」
もう、泣きそう……。もう、普通に…………ピザ食べたい。