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カイショーナシ


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俺が織部と話をしていると、葵と子供達が帰って来た。

「ただいま~!」

「お!最愛の嫁と子供が帰って来たぞ。」

まだ嫁じゃねーわ!俺は三人を出迎えるために玄関に行くと、ルンが抱きついて来た。

「紅葉~!今日見てた?見てた?ルン、発表したよ!」

「ああ、見てた。将来の夢はお弁当屋さんです。ってちゃんと聞こえた。食いしん坊のルンにピッタリだな~!」

「ふふふ~!」

そう言って俺はルンの頭を撫でた。ルンは満足そうな顔をして、織部の所へ行った。

「僕は……僕は……」

やっと靴を脱いで、家に上がって来たポロは目が赤かった。

「なんだ、ポロ、やっぱり泣いたのか?まぁ、ヘラクレスオオカブトになるにはまだまだ修行が足りないな。」

ポロは俺の足にしがみついた。俺はポロの頭を撫でて言った。

「発表、よく頑張ったな。」

そう言うと、ポロはまた泣いていた。


後から葵が入って来た。葵は俺を見て驚いた。

「紅葉君…………。」

「葵、おかえり。」

「…………ただいま。」

葵は俺を見ると、その目から涙をこぼした。

「え……どうした?」

「紅葉君……。」

「あー!紅葉、あーちゃん泣かした~!」

ルンにバレた。ルンは織部に抱っこされて玄関に来ていた。織部はルンを降ろすと、ハグしろとジェスチャーをしていた。

「里梨、そこはぎゅっと!ほら、ぎゅっと!」

いや、ポロが足に絡み付いて無理だろ。そう思っていたら、ポロが俺の後ろにまわって、俺の腰を強く押した。その勢いで、裸足で玄関に降りて…………葵を抱き締めた。

「紅葉君……紅葉君……」

「……ごめん。」

耳元で………葵の泣き声でかすれた小さな声が聞こえた。

「…………会いたかった。」

その声に胸が締め付けられた。

「……俺もだよ……。」

そう言って強く抱き締めた。


すると、突然玄関の戸が開いた。

「こんばんは~!」

「うわぁっ!!」

驚いた拍子に、葵に足を踏まれた。

「痛っ!」

「あ、ごめんね!ごめんなさい!」

その光景を見ていた織部が叫んだ。

「おい~!お前このタイミングはないだろ~!」

「ざけんな!あんたが迎えに来いって連絡してきたから来たんでしょ!?てっきり今日は帰って来ないかと思ってたよ!」


「もしかして………織部の奥さん?」

「あ、どうも初めまして。織部早苗です。うちの夫がお邪魔しました。」

織部の奥さんは、気の強そうな人だった。

「この………甲斐性なし。」

「何だよそれ!昭和か?昭和の話か?」

「昭和も平成も、平成終わっても変わらない!あんたの病気は変わらない!」

病気………?それを聞いてルンがショックを受けていた。

「オリベ………病気なの?」


「あー……。うん。」

織部の奥さんは少し困った。

「ルンちゃん、将来こうゆう男には気をつけるのよ?オリベはね、浮気性ってゆう病気なの。」

こらこら、子供に何教えてんの!


「カイショーナシって何?」

ポロまでそんな言葉を………!

「ヘラクレスオオカブトよりカッコいい?」

ポロ、それを織部に訊くな!

「そうだな!カブトムシよりはカッコいいな!」

やめろ織部……。

「じゃあ、僕、カイショーナシになる!」

だからぁ~!!

「ポロ君、甲斐性なしになるくらいなら人間やめた方がマシよ。ホント、オリベがカブトムシだったらいいのにね。」

いや、それだとあんた、カブトムシの嫁だぞ?


「いや、カブトムシよりはダメでも人間の方がマシだろ。」

「そうだ。ポロはカブトムシ以外の、人間でなりたいものはないのか?」

甲斐性なし以外なら何でもいいか。

「じゃあ………じゃあ………忍者!」

に、忍者………!!まぁ、カブトムシよりマシだ。すると、織部の奥さんが言った。

「いいじゃん!忍者!大きくなったらオリベを暗殺してね~!」

こらこら、この年から暗殺依頼すんな。


それから織部の奥さんは、酔っ払った織部を連れて帰って行った。

「まぁ、また来いよ。」

「ありがと~な!またな!」


そう言って、織部は帰って行った。


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