表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/105

雪遊び


43



「鬼~のパンツはいいパンツ~♪強いぞ~♪強いぞ~♪」


最初の一発目は、体を横にして避けようとしたら、背中に当たった。


「虎の毛皮でできている~♪強いぞ~♪強いぞ~♪」


俺達は、ルンとポロの鬼のパンツの歌を聞きながら、雪の玉を投げ合っていた。


「5年履いても破れない~♪強いぞ~♪強いぞ~♪」


「きゃぁ!」

今度は俺の放った雪玉が葵の頭に見事に当たった。


「10年履いても破れない~♪強いぞ~♪強いぞ~♪」


葵は少し固まった。あ、今の絶対頭に来てる。


「履こう!履こう!鬼のパンツ~♪履こう!履こう!鬼のパンツ♪」


うわ~!雪玉を何個も持って連打して来た!!球速がヤバい!!ヤバい速さしてる!!マジだ!マジ!


「あなたもあなたも、あなたもあなたも、みんなで履こう鬼のパンツ♪」

「うわっ!!」

顔に当たった!!冷てっ!!

「もう、降参します!!」



それは、俺が散々葵の愚痴を聞いていた時…………ルンとポロは二人で鬼のパンツを歌っていた。


「鬼のパンツ欲しいな~!虎の毛皮でできてるやつ~!」

ポロがそう言ったら、葵が少し笑って言った。

「鬼のパンツ欲しがるなんて可愛いね。」

「あーちゃんのパンツもらえばいいじゃん。」

ルンの言葉には笑えなかった。驚愕していた。


「あーちゃん鬼になるって言ってたよ?」

「ぶっ!!確かに言ってた……。」

俺が思わず吹き出していたら、葵は慌てて否定した。

「いやいや、もう、鬼じゃないから!」


すると、ポロが確認していた。

「あーちゃんのパンツ虎の毛皮でで出来てる?」

「出来てないから!普通に綿だよ!綿100%だから!」

思わず笑って言ってしまった。

「あははははははは!さすがに鬼でも、綿100%じゃ10年は履けないな」

「紅葉君、それ私が鬼の前提で話してるよね?」


あ…………墓穴を掘りました。


葵は一度窓から外を見て言った。

「表へ出ろ!!」


ジャケットを着込んで外へ出ると、すっかり日が暮れていた。庭の雪は、家の明かりに照らされて真っ白に輝いていた。雪はもうやんでいて、辺りは妙な静けさだった。空気は冷たく澄んでいる。吐く息が、驚くほど真っ白だ。

「外に出てどうするんだ?」

「私、鬼じゃないから、反撃アリだよ!」

そう言って葵は雪を投げ始めた。俺達の様子を見てルンとポロも外に出て、雪遊びをした。


そして…………ルンとポロの鬼のパンツの歌と共に、大人の本気の雪合戦が始まった。


「きゃああああ!冷たい!!」

「うわっ!!当たった!」


散々雪を投げ合って…………もう限界だ!!疲れた!!

「もう降参します!」

「あー!ストレス発散できた!」

そう言って、葵は雪の上に仰向けに倒れた。俺も葵の隣に倒れた。


空は真っ暗だった。星は1つもない。だけど…………ちらほら揺れる雪が見えた。また、雪が降りだしてきた。


「あーちゃん、紅葉!見て!ポロと二人で雪だるま作ったよ!」

起き上がって見てみると、その雪だるまは角が2本ついていた。鬼!?そこ鬼!?


「もっと可愛いの作ろうよ~雪兎とか!」

「雪兎って?」

葵は雪を楕円の山を作ると、庭にあった南天の木から、緑の葉と赤い実を取って来た。

「この葉っぱを耳にして、赤い実は目。ほら、できた。」

「本当だ!ウサギさん!可愛い~!ルンも作る!」

「僕も!僕も!」

子供達は南天の木から葉と実をむしり取って、大事そうに雪の上に置いて、ウサギを作っていた。


あ、そうだ!あれがそろそろいい頃かも。

「葵、葵。」

俺は玄関に葵を呼んだ。そして、雪の中に隠しておいたミカンを半分に割って、片方を渡した。

「これ、子供には内緒。」

「何これ?」

「雪の中に入れておいた天然冷凍ミカン。」

ミカンを剥いて口に入れると、ミカンは少しシャリシャリしていた。

「美味しい!運動した後の冷たい果物って美味しい~!」


その言葉をルンは聞き逃さなかった。

「何食べてるの?二人でずるーい!」

「あ、食いしん坊にバレた!」

「ちょっと凍ったミカンだよ。少し食べる?冷えるから少しだけね。」

葵がルンにミカンを与えていると、ポロは震えて言った。

「僕、あったかいのがいい。」

「そうだね。中に入って温まろう。お風呂が沸くまでココアでも飲もうか?」

「飲む~!」


確かに、全身に雪を浴びて体が冷えた。玄関を閉める前に、ふと、鬼の雪だるまと目が合った。いつの間にか角が丸くなって、目が赤い実になっていた。何だか可愛らしい鬼だ。鬼は外。福は家。

そう思いながら、玄関の戸を閉めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ