お年玉
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「さて、お正月になったらなんて挨拶するでしょうか?」
「良いお年を!」
「ポロ、惜しい!それは年末にする挨拶だ。」
三が日も過ぎた頃、ルンとポロの初めてのおつかいに挑戦する事になった。
「ポロ、あけました。おめでとうございます。だよ!」
「心配だな……。やっぱり俺も一緒に行くよ。」
「ダメ!紅葉はここで待ってて!」
おつかいに行くのは、家から3分もかからない看板の無いあんこ屋。もう、やっていない可能性の方が高いし、藤田のじいさんの様子も知りたいんだけど……。
「大丈夫!すぐそこの倉庫みたいな所でしょ?ルンとポロに任せて!」
ルンの使命感に火がついて、二人だけで行く事になった。
「僕、怖いよぉお。」
ポロ、既に泣いてるけど大丈夫か?
すると、葵がビニール袋を持って来た。
「じゃあ、これ、お裾分けですって言って渡してね。焼豚、柔らかく炊けたから。」
「うん。わかった!」
「僕……僕……」
ポロは葵に抱きついてしばらく離れなかった。
「ポロ、残る?ルン、1人で行こうか?」
ポロは少し考えて、葵から離れた。
「…………行く。」
「偉いね。ポロ。」
そう言って葵がポロの頭を撫でると、ポロは俄然やる気になって、狩りに行くかのように言った。
「あーちゃんのために、ちゃんとあんこ買って来るね!」
二人は張り切って、すぐそこの倉庫のお店へでかけて行った。俺と葵は玄関で二人の後ろ姿を見送った。
「大丈夫かな?」
「紅葉君意外と心配性なんだね。」
葵は何でそんなに平然としてられるんだ?
「まぁ、きっと買えなかったって帰って来ると思うから、帰って来たら慰めてあげよう。」
何だかドライというか、肝が据わっているというか……子供達の事を信じているんだなと思う。
「そうゆう所、少し尊敬する。」
「え?」
「俺は誰かに委ねるのが苦手だから……。」
すると、葵が笑いだした。
「あはははは!ごめん。だって、子供達の事私に押しつけてどっか行っちゃう人が、何言っちゃってるの?って思ったよ!」
「っ!!確かに!!」
どの口が言ってんだ?って感じだ。笑える。笑えた。
「あはははは!」
すると、すぐにルンとポロが帰って来た。
「紅葉~!お年玉もらった~!」
「え…………誰に?」
「おじいちゃん!」
おじいちゃん?藤田のじいさんか?ポロは、思った通り凹んで帰って来た。
「あんこ……買えなかった。」
やっぱりもう、作って無かったか。
「お年玉のお礼は言えたか?」
「うん!ルン、言えたよ~!」
「ぼ、僕も……。」
後で俺もお礼言いに行こう。二人の頭を撫でて言った。
「ちゃんと言えたんだな。偉い偉い。」
「二人とも、おつかいご苦労様。」
葵が出て来ると、ポロは葵に抱きついて号泣した。
「あーちゃんに、あんこ……☆%@△……うぇえええ。」
「うんうん。ありがとう。」
寒いから早く中に入ろうと言って、中に入ろうとした。すると、後ろから声がした。
「紅。紅か?久しぶりだな~」
「藤田のじいさん……。」
そこには、随分歳の取った藤田のじいさんがいた。まだ生きてたんだ……。
「まだ生きとるわ!おめー顔に出とるど。」
「え?マジ?」
「あはははは!親父と変わらんな~そっくりでどっちかわからんかったわ。」
藤田のじいさんは酒の瓶を葵に差し出して言った。
「ちと、邪魔するよ。紅坊、一杯付き合え。」
そう言って、藤田のじいさんは居間ではなく、縁側のある廊下に腰を降ろした。