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当たり前の事



俺は、ルンとポロが買い物に行っている間、スーパーの外で待っていた。昼下がりのスーパーは、人の出入りが少なかった。


すると、…………見知らぬおばさんが俺を見て言った。

「大きな犬ねぇ……。やだ、この子首輪してないわ!野良犬かしら?保健所に連絡した方がいいかしら……。」


保健所!?犬じゃないのに!?まぁ……こんな所に狼がいるとは思わないか……。保健所?保健所って…………


俺は頭の中で最悪のシナリオを考えていた。保健所→捕獲→マンションで飼えない大型犬→貰い手無し→殺処分


殺処分…………!?逃げよう!!


でも……ルンとポロがまだ……!!

どこか……どこかに隠れよう!とりあえず、自動販売機の影に隠れた。どうか……どうか……見つかりませんように。見つかっても、役所に通報されませんように……。


い、いや、野良犬なんて普通どこにでもいるもんだろ?普通……普通…………いねぇよ!今時、野良犬がフラフラしてる所なんか、見た事ねぇよ!怖い…………捕まったら殺される!!野良犬じゃないのに……。犬じゃないのに……!!


自動販売機の隅で丸くなって、震えながら待っていた。すると今度は、ルンやポロより大きい子供がマスクをしてやって来た。

「あ、動いた!本物だ!」

そんなに驚くか?少年……。


そうか……!!動かなければ、ぬいぐるみのふりができる!?偽物になりきればいいんだ!そう思って固まっていると……

「お母さん!こいつ全然動かない!」

「あ!犬に触っちゃ駄目よ!犬は色んな菌持ってるんだから!」

は…………はぁ?勝手に触ろうとしてバイ菌扱いかよ!こいつの方が明らかに菌持ってるだろうが!!

「ゴホッゴホッ!」

さっきから咳き込みまくってるぞ!?

「お前、偉いな。主人の帰りを静かに待ってられる、賢い犬だな!」

少年は、屈託の無い笑顔で俺を誉めた。


…………褒められた。


いや、だから犬じゃないし。あいつら主人じゃないし。


でも、俺は…………こんな風に素直に褒めた事があったか?あいつに、少しでも褒めてやれてたら…………

俺は会社の後輩の事を思い出していた。仕事ができなくて、ろくでもない奴だったけど…………悪い奴じゃなかった。


そんな事を考えていると、ルンとポロが帰って来た。

「遅い!!早く帰るぞ!!」

「うんしょっ!」

え…………?何買ったの?

「重そうだな……。何買って来たんだ?」

「紅葉が何でも好きな物買っていいって言ってたから……ジャーン!」

「メロン!!」

め、メロン!!メロン…………メロン!?

「はぁ?!ふざけんな!普通、弁当とか、パンとかだろ!?」

「…………。」

「…………ごめんなさい。」

そう言って二人は泣き出した。


ああっ!そんな大声で泣いたら目立つ!!

「あ、いや、いいんだ!俺も、俺もメロン好きだし!」

「紅葉、メロン好き?」

「…………良かった。」

俺のフォローに二人は涙を拭きながら抱きついて来た。


こいつらは…………当たり前の事が当たり前にできない。


今は俺も同じだ。それなのに…………二人きりで買い物へ行った事を、むしろ褒めるべきなのに……。待ってるだけの俺が、怒る資格なんてどこにもない。そういえば、後輩も言っていた。

『里梨さんが当たり前に出来る事、全ての人が当たり前に出来る訳じゃないですから。』


俺はあの時、犬だったから少年に褒められた。人間だったら褒められたりしない。求めている能力以上の事をやれたら褒められるんだ……。俺は、こいつらに一体何を求めていたんだろう。こんな、何も出来なくて当たり前の幼児に……。


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