大掃除
38
何でこんなに窓が多い家なんだ?
「って思ってる?顔に出てるよ。」
マジか……。大掃除を手伝っていた。この古い家は、縁側が全部ガラス戸になっていて、窓掃除がやたらと大変だ。
「でも、朝、光がいっぱい入っていいよね。」
「でも、プライバシーは全然守れないな。」
「確かに。」
こんなにガラス戸だと、カーテンを閉めなければ外から丸見えだ。すると、葵が外から中の様子を見て言った。
「やだ!!どうしよう!張り替えたばっかりなのに!」
「あ!やられた…………。」
座敷の障子に、五百円玉くらいの穴が空いていた。
「コラー!誰だよ!穴あけた奴は~!」
二人の元へ行くと、何やら二人はモメていた。
「ルンが……ルンがぶつけたの……。」
「ルンじゃないもん!ポロの剣だもん!」
こうゆう場合、絶対二人ともどっちかのせいにする。
「二人で遊んでてこうなったんだろ?二人で謝ればいいだろ?」
「ごめんなさい……。」
「ルンは悪くないもん!」
そう言ってルンは寝室へ引きこもった。
こうゆうとき、大した事じゃないのに、素直に謝れないのはルンの方だ。
「ポロ、本当は何があった?」
「ルンが剣を貸してって引っ張って、僕が嫌だよって言って、引っ張ったら…………当たっちゃった。」
「それは……やっぱり二人が悪いよな?」
その頃、葵は何やら半紙を切って障子に貼っていた。
「ルン、出ておいで。こっちに来てみて。」
すると、寝室のドアが少し開いた。二人が何やら話すと、ルンが障子の前に走って来た。
「わぁ!本当だ!くまさん!」
障子の穴には、くまの絵が貼られていた。そのくまは葵の描いた絵本のくまにそっくりだった。
くまを見ていた二人に葵が言った。
「空けちゃったものは仕方がない。いいよ、いいよ。それでもいいよ。それでもいいから、今度からは二人でくまさんを守ってね。」
「うん……。…………ごめんなさい……。うぇえええ……。」
ルンは泣きながら葵に抱きついた。
「あれ?ルン、熱あるかも。」
え?熱?ポロはたまにあるけど、ルンは珍しい。葵はルンを寝室へ連れて行った。
その後、1人残されたポロは、何故か意気込んでいた。
「僕、この魔法の剣でくまさんを守ってみせるよ!!」
いや、それはまた穴を空けるフラグだ。止めとけ。それに、1人で一体何から守るつもりだ?
寝室からパジャマに着替えたルンが葵と一緒に出て来た。
「どうしよう。1人じゃ寝られないって……。まだ裏側の窓掃除終わってないのに……。」
「いいよ、俺がやっとくから。葵はルンの側にいてやってよ。普段病気しない奴ほど、病気の時は心細くなるんだよな?」
「紅葉、ウザイ……。」
う、ウザイ…………!!それ、反抗期の娘が父親に言う台詞だろ!?
「まぁ、こっちはポロに手伝ってもらうし。な?ポロ!」
ショックを受けてはいられない。仕事をしよう。なぁ、息子。ポロは夢中で剣で遊んでいた。
「僕、今忙しいんだ!」
え?何に忙しいの?
すると、ポロはポーズを決めて言った。
「僕には、守るべきものがあるから!!」
だから…………どこの何から守ってるんですか!?