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プレゼント


36


「お休みなさい!!」

二人は張り切って寝る支度をしていた。サンタ活動の賜物だ。ポロは俺に寄って来て言った。

「サンタさん来たら起こしてね。絶対だよ?僕、サンタさんに会ってお礼が言いたいんだ。」

ポロ、お前律儀だな。でも、多分、サンタはお礼状じゃなきゃ受け入れてもらえないと思うぞ?


「あ……!そうだ!忘れる所だった!あーちゃん、」

「え?何?」

そう言ってルンは葵に抱きついた。

「これ、クリスマスプレゼント!」

「え!ありがとう。……嬉しい。」

え?ハグがクリスマスプレゼント?


「僕も!僕も!ぎゅーする!」

ポロも葵に抱きついて言った。

「先生がね、パパとママにぎゅーをプレゼントしてねって言ってたの。」

そうゆう事か。


二人は小さな体で、俺にもハグをしてくれた。

何だか嬉しいな。これは最高のプレゼントかもしれない。


「紅葉からあーちゃんには?」

「え?ごめん……何も用意してない……。」

「違うよ、紅葉君……。これ、多分、私達ハグしろって流れだと思うよ?」

えぇえええええええ!!そんな無茶振り!!


「で、でも……」

「気持ちはわかるけど、二人がスッゴくキラキラした目でこっち見てるよ?」

葵はなんでそんなに冷静でいられるんだ?緊張するのは俺だけ?

「じゃあ……」

わかったよ!やるよ!そんな目で見るなよ!


俺は思いきって…………葵を強く抱き締めた。


自分の爆発しそうなこの胸の鼓動が、葵に伝わるんじゃないか?そう思うと恥ずかしくなった……。


葵の息づかいがこんなにも……近い。


何これ?何なんだよ……。子供の前でハグの披露って…………葵と離れて、ふと、二人の方を見ると…………


ね、寝てる!!


気まずっ!!


先に口を開いたのは葵の方だった。

「あの……リビングで……お茶でも飲む?」

「……え……あ……うん。」


居間のこたつで興味のないテレビを見ていると、葵がコーヒーとみかんを持って来た。

「あの……どうぞ。」

「あ……ありがとう。」


「あの…………!!」

今度は二人同時だった。

「先に……どうぞ。」

「紅葉君の方が先にどうぞ。」

「じゃあ…………これ……。」

俺は銀行のカードを差し出した。


「こんなの受け取れないよ!」

「確かに、重いかもしれないけど、必要になったら好きなだけ使って欲しい。」

「里梨君バカじゃないの?私の事そんなに信用して大丈夫だと思ってる?」

確かに……。でも、他にあの二人を任せられる人はいないし……


「じゃあ、騙されてるとしたら、うちの親もバカだな~あはははは!」

「そんな事ない!ご両親はいい人だよ?ここに住むのに、バイト代出してくれるって言ったんだよ?」

「出してもらえば良かったんだよ。葵は自分の働きに見合った報酬をちゃんと受け取るべきだよ。」

葵はこの家のために地域行事に参加したり墓の掃除までしている。畑や田んぼも手入れをしなければ農地にはならない。


そこまでして…………ここにいたいか?こんな所に、こんな田舎に…………。

「ルンやポロのために受け取ってよ。」

「じゃあ、二人のために使わせてもらいます。あ、プレゼント!」

「そろそろサン活しますか?」


二人の寝室へ行くと、二人はよく寝ていた。葵が用意したプレゼントを二人の枕元に置くと、サンルームに置いたミルクとクッキーを取りに、そのままサンルームへ行った。サンルームは、ツリーの電飾の明かりだけだった。


「二人とも寝てるのに、この格好って意味無いような……。」

「確かに……。でも、パパがサンタになるのが普通なのかなと思って……用意したの。」

まさか自分もこれを着る時が来るとは思わなかった。


「あの……さっき、プレゼントもらったから、私からもプレゼントしたい。」

「え?それって…………」

葵は俺に抱きついた。

「メリークリスマス。」

そう言って俺から離れると、足元に置いてあったミルクの入ったコップを倒してしまった。


「あ…………クスクスクス……。」

「クククク…………雑巾……。」

二人で声を殺して笑った。


結局、その日は…………本当の事は何も言えなかった。


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