サン活
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追伸、サンタクロース様
結局、魔法の剣とお姫様の首飾りになりました。くれぐれも、それ以外は止めてください。
いや、出来れば人間の姿に戻してください。
「ルン、サン活する!」
ルンが高々と宣言していた。葵は、俺が思った事と同じ事を言葉にしていた。
「サンカツ?サンカツって何?」
「オリベがね、サン活しないの?って言ってたの。」
保育園での悪影響が…………ほぼ織部。
「サンタ活動、初めます!」
そんな、アイドル活動初めます!みたいなテンションで何始めるつもりだよ……?
「まず、いい子にする!」
あ~サンタはいい子の所に来るんだっけ。
「あと、早く寝れるようにいっぱい遊んで、サンタの通り道作る。紅葉、この柱サンタさんがぶつかって危ないから、そっち側に片付けて。」
いや、それは普通に無理だから。サンタのためにリフォームしません。
ルンが片付けているのか散らかしているのかよくわからない遊びをしていると、葵が呟いた。
「やっぱりおもちゃ屋さんかな~?」
そうだ、プレゼントまだ用意してなかった!
「紅葉君、またいなくなっちゃったし……あんまり高価な物は買えないけど私が用意しよう……。」
葵が家計簿を見てため息をついていた。そういえば…………結局生活費を受け取ってもらえなかった。俺…………ヒモじゃん!!
こうしてはいられない!鞄から通帳と印鑑を咥えて、葵に渡した。
「これ、使ってください!」
「コラ!紅葉!勝手に持って来ちゃダメでしょ!?これ、大事な物なのよ?うわっめちゃくちゃ入ってる!」
そうなんだよ……いずれ働けなくなるんじゃないかと心配で貯金してたんだよ。まさか本当に働けなくなるとは思ってなかったけど……。
「こんな大金置いていなくなるなんて…………やっぱり…………。」
いやいや死んでないよ~!ここにいるよ~!!
それを見ていたのか、ポロが言った。
「僕、やっぱり…………サンタさんに、魔法の剣お願いするの止めるよ。」
「どうして?」
どうして?お兄さんよりよっぽど現実的だろ?
「紅葉が人間に戻りますようにってお願いする。」
ポロ…………。
「ポロ…………紅葉が紅葉君だと思い込んでるんだね……。」
葵は涙ぐんでいた。
「ポロ、残念だけど……紅葉は犬だから、紅葉君にはならないんだよ?」
いや、なるんだよ、これが。
どうゆう条件やタイミングで戻るのかはわからない。それが、だいぶ厄介だ。クセや兆候がわかればまだマシなのに……。
「大丈夫。クリスマスには帰って来るから、安心して遊んでおいで。」
葵がそう言うと、ポロはルンの所へ行った。
すると、葵はこたつテーブルに頭を落としながら、俺に呟いた。
「一緒にいる時はね、全然考えないんだけど…………会えないと、会いたいって、紅葉君の事ばっかり考えてる自分に気がつくの。私、どうかしてるよね……。」
葵…………。
この時だけは、狼の姿になって良かったと…………初めて思った。