クリスマスツリー
33
拝啓サンタクロース様
人の恋路を邪魔するのは止めてください。やたらとプレゼントしたり、お願い叶えたりしないでください。迷惑しています。
「ダメ!!絶対にダメだ!!」
「ヤダ!!ルン、サンタさんにお願いするの!!」
ルンはこうなったら頑固だ。こんな風にスイッチが入ってしまうと、全くと言っていいほど言う事を聞かない。
「どうしたの?」
「あーちゃん!あーちゃんはいいって言ってくれるもん!」
いや…………絶対いいって言わないだろ……。
「サンタさんに、赤ちゃんをお願いする!!オリベがそうしたら赤ちゃん来るって!」
「…………。」
葵は黙った。そして拳を握りしめて言った。
「オ~リ~ベ~今度会ったらケツの穴埋めてやる……。」
その台詞、メジャーなの?一般的?え?違うよね?
「赤ちゃんのお人形とかがいいんじゃないかな~?サンタさん本物の赤ちゃんじゃ大変だと思うし。」
情に訴える作戦でいくのか!さすがだ!
「そうだよ。サンタさん大変だから、手紙には、とにかく手紙には、お人形って書こう?あ、そういえば……!ポロはなんて書いたんだ?」
ポロは無言で、書いた手紙を俺に渡して、再び松ぼっくり遊びに戻った。
ポロの手紙には…………
『お兄さんが欲しいです。』と書いてあった。
もはや絶対に無理!!物理的に不可能…………!!
こんな事なら、ブランド子供服や最新ゲーム機って言われた方がマシだ!!どうにかしろよサンタ!!
「何だか、二人が浮かれてるのを見ると…………叶えてあげたくなるよね…………」
「はぁ!?」
思わず声が裏返ってしまった。
「いや、だからって子供作ろうとかそうゆうんじゃないよ?勘違いしないでね。」
「わかってるって……。」
いや、ホント、そんなに釘を刺されなくてもわかってるから……。あれから、何だか気まずい。それに加えて、このサンタへの手紙の件…………最悪だ……。なんとか人間の姿でやっておかないと……
クリスマスプレゼントの用意
名誉挽回
失業保険の手続き
身辺整理
告白◀️
…………無理だ。
葵は小さな端切れで何かを作っていた。
「それ、何?」
「あ、これ?オーナメント作ってるの。」
へぇ……器用だな。オーナメントはもう何個か出来上がっていた。サンタクロースやトナカイ、こっちは雪だるまだ。
「あとはクリスマスツリーになるような木があればいいんだけど……。」
「クリスマスツリー、あるけど?」
確か、まだ倉庫にあったような……?俺は倉庫に探しに行った。
ツリーは思った通り、すぐに見つかった。箱はホコリを被っていたけど、中身は綺麗だった。近くに飾りがないか探したけど、見つからなかった。まぁ、飾りは葵が作ってるからいいか。葵に持って行こう。
「どこ飾る?」
「うわっ大きなツリー!これ、いつもどこに置いてたの?」
「テラス前のサンルームかな?」
「じゃ、サンルームにしよう。」
俺はサンルームにツリーを設置した。オーナメントや星はない。ただの観葉植物みたいだ。
子供の頃、母さんの趣味で、毎年このデカイツリーを飾っていた。今なら少しわかる。飾ってやりたくなる親の気持ちが。
子供の時、賑やかなツリーを見てワクワクした。ルンやポロも、これを見てワクワクするんだろうか?そう思うと、何だか少し自分もワクワクした。