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米を炊く


29


ご飯を作ろう!と意気込んだものの…………冷蔵庫にはすぐに食べられそうな物はなく……。

「よし、ご飯を炊こう。ルン、ボウル出せるか?」

「うん!」

米を炊く事ぐらいならできるだろう。

「ポロは椅子持って来られるか?」

シンクの前に椅子を並べて、ボウルを置いた。


「軽量カップにお米いれて、ボウルにお米を入れよう。お米カップにピッタリ入れて。」

ルンは米びつからカップに山盛り持って来て、米をあちこちに溢していた。俺はとっさにボウルを咥えて、ルンの前に差し出した。


ボウルにいれた米を見てルンが言った。

「これだけ?」

「じゃ、もう一杯。」

そう言ったらストンと、ボウルを落としてしまった。幸いそこまで米は溢れなかった。


「やっぱりいい。一杯だけにしよう。これ、シンクに持って行けるか?」

「一杯だけ?紅葉、お米少ないよ?」

いつもは多く炊いているのを見ていたルンが言った。

「一回で成功とは限らない。失敗も考えてこのくらいにしとこう。ポロ、お水入れて。」


ポロは蛇口をひねってボウルに水を入れた。

「ストップ!そのくらい!」

「ルン、混ぜ混ぜする!」

そう言ってルンは腕捲りをして、米をガシガシ掴んでは放し、掴んでは放し、混ぜていた。これ、正解?米、洗えてないような……。


「僕も!僕もまぜたい!」

「じゃ、一旦水捨てよう。」

白濁した水を捨てようと、ボウルを傾けた瞬間、ルンの手が滑ってボウルをシンクにひっくり返してしまった。

「あー!」

「…………。」

一瞬、ただ呆然とその光景を見ているしかなかった。

「う……うわぁああん!」

「いいよ、いいよ。救えるだけ救おう。」

カップに山盛りだったし……。多少減っても大丈夫だろ。


ルンとポロは必死にシンクの米を拾った。半分くらいは流れたかなぁ……。

「じゃ、ポロに交代!」

ポロは、米に手を突っ込んで動かなかった。手が動いたと思えば水から米のついた手を引き上げた。そんな…………泥水で遊ぶみたいな……みんな、混ぜよう?


「ルン、そこの引き出しの二段目から泡立て器取って来て。」

「どれ?これ?紅葉これ何?」

「それ、ピーラー!手を切るなよ?そっち!ちょっと網っぽいの。」


何度もやり取りをしてやっとルンは泡立て器を持って来た。

「ポロ、これでかき混ぜて。」

すると、ポロはぐるぐるかき混ぜた。

「水切れるか?今度は少しずつ、少しずつ……」

そう言って慎重にボウルの水を捨てた。


「ストップ!このくらいにしておこう。」

「水まだ残ってるよ?」

「これ以上はボウルがひっくり返る。これ、炊飯器に入れてくれ。」


ルンはボウルを持って炊飯器の所まで移動して言った。

「ポロ、炊飯器開けて。」

「うん!」

ポロが炊飯器を開けると、ルンは炊飯器の釜に米を注いだ。

「僕、お水持ってくる!」

そう言ってポロはコップに水を入れて炊飯器の前に持って行った。


「紅葉、お水どれくらい?」

「1の線の所まで。」

「あ、ポロ、入れすぎ!」

ルンがそう言うと、ポロは泣き出した。

「ご……ごめんね……。」

「いいよ、いいよ。少ないよりは多い方がいいだろ。多分。」

俺はそう言って炊飯器の蓋を閉めた。


「スタートボタン、一緒に押そう。ポロ。」

二人は一緒に炊飯ボタンを押した。


思ったより……大変だった。それより、もう一仕事必要だ。

「ルン、ポロ、頼みがあるんだ。葵のために、氷枕を作って欲しい。」


勝手知ったる実家だ。棚から氷枕を引っ張り出して、二人の前に置いた。

「ルン、ボウルに氷出して来て。」

「ポロ、水を汲んできて。」

ルンはすぐに氷をボウルにいれて出して来た。ポロはすぐにコップに水を入れて来た。

「これ、どうするの?」

「この中に入れられるか?」

「やってみる。」

二人は意外にも、試行錯誤でやっていた。


ポロが持って、ルンが入れるらしい。こうやって、二人は協力して何でもこなして行く。そんな二人を誇らしく思う。愛しく思う。失敗しても、いいよ。と言ってやりたくなる。


何とか氷枕ができがった。辺りは水浸しだけど……。

「これ、葵に持って行こう。」


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