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ドッグフード


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葵は優しい。そして厳しい。


「おすわり!待て…………よし!」

葵…………。

「おっかしいな~?お腹空いてないのかな~?犬ってもっとこう……しっぽ降って嬉しそうにご飯待つものじゃない?」

犬じゃないから!狼だから!いや、本当は人間だから!!


「ルン~ポロ~!犬の餌は食べられないって葵に言ってくれよ。」

「あーちゃん、紅葉、犬の餌は食べられないって。」

すると、ポロが泣きそうになった。

「僕、せっかくお皿に入れたのに……。」

「ああっ!ごめん!ごめんポロ!でも、これはダメ!猫缶よりヒドイ!!ドッグフードは無理!!」


ルンは俺の方を見てボソッと呟いた。

「この前は猫缶はヤダって言ってたのに……。」

「だからってドッグフード食べたい訳じゃないから!」

「やっぱり試供品のドッグフードじゃ嫌なのかな~?」

そうゆう問題じゃないから!


俺は狼の姿になってから、三人と一匹の生活が始まった。葵は俺を犬だと思って飼い始めている。

「役所に登録する前に、紅葉君のご両親に了解とらないと……。こんなに大きな犬用の犬小屋なんてあるのかな?」

犬小屋…………?え?俺だけ犬小屋…………?


「本当に…………どこ行っちゃったんだろう……紅葉君。」

「ポロ、俺は仕事で東京へ戻ったって葵に言ってくれ。」

「あーちゃん、俺は仕事で東京へ戻ったって葵に言ってくれ。」

ポロ…………それ、そのまま言うなよ。


「紅葉君がそう言ってたの?」

「そうだって言ってくれ。」

「そうだって言ってくれ。」

だから、それ、そのまま言うと疑わしくなるから……。


「そうなんだ……。じゃあ、戻って来るのを待つしかないか……。ちゃんと言ってくれればいいのに。別に二人を預かるくらい、断ったりしないのに。」

葵は立ち上がると言った。

「いいよ、いいよ。それでもいいよ。そう思えばいいか。」


何だそれ…………おまじないか……?

おまじない?そのおまじないどこかで聞いたような…………。


そう思っていたら、ルンが葵に言った。

「あーちゃん、顔赤いよ?」

「熱……出ちゃったのかな?少しだるいかも……。」

葵、大丈夫か?すぐに寝た方がいい。

「すぐお昼ご飯作るね。」


お昼はいいから寝てろよ。

「お昼は自分達でテキトーに食べるから寝てろって言ってくれ。あ、ルン!今度はルンが言って。」

「あーちゃん、お昼テキトーに食べるから寝てて。」

最初からルンに伝えてもらえば良かった……。

「でも…………。」

「僕まだお腹空いてないよ。」

「じゃあ、少しだけ寝かせてもらうね。二人だけで大丈夫?」

俺がいるし。大丈夫だ。


「大丈夫だよ!紅葉いるし!」

「犬の方のね……。」

おいおい、逆に不安になってんじゃねーか。


「じゃあ、お昼の鐘が鳴ったらお家の中に入って遊んでね。」

「はーい!」

そう言って葵はフラフラした足取りで家の中へ入って行った。


葵が家へ入ると、ポロが小さな声で言った。

「僕……お腹空いた。」

「え?さっき空いてないって……。」

急にポロが泣き出した。

「嘘も…………ホーベンだから。」

ポロ…………。お前、優しいな。


「よし、じゃあ…………みんなでお昼を作ろう!二人とも、手伝ってくれるか?」

「うん!ルン!手伝う!」

「僕も!僕も手伝う!」


この姿じゃ大したことはできないけど……。それでも、少しは何か、葵の役に立ちたい。


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