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犬じゃないのに




ドアを開けると、幼児くらいの子供が二人いた。女の子と男の子の二人だ。子供達は怖がるどころか、羨望の眼差しでこっちを見て来た。

「ワンちゃん!」

「ワンちゃん?ホントだ~!」

それどころか、ベタベタ触って来やがった。あ、おいこら止めろ!毛並みに沿って背中を撫でるな!

「犬じゃない!!帰れ!!」

「喋った!ポロ、この子喋ったよ?すごーい!」

すごーい!じゃない!何普通に動物が喋る事受け入れてんだよ!

「こら!勝手に上がり込むな!」

「クレハ~!どこ~?」


二人は部屋に入るなり、あちこち開けて探し始めた。

「あ!そっち勝手に開けるな!」

やがて、探し疲れた男の子が言った。

「ワンちゃん、クレハいないの?」

「いないなら、帰って来るまで待ってよっか!」

そう女の子が言うと、二人はくつろぎ始めた。


「何くつろいでんだよ!俺が紅葉だよ!俺に何の用だ?」

「え?ワンちゃんがクレハなの?」

「…………。」

二人は少し黙って、左右に首を傾げた。

「ワンちゃんが…………パパなの?」

「はぁ?パパ?」


?????混乱した。そこには、無数のはてなマークが存在した。


「だって、ママがしばらくパパの所へ行って来なさいって。」

「パパの名前は、クレハって名前だって。紅葉と書いてクレハ!」


ええ、…………確かに。俺の名前は紅葉と書いてクレハですとも。子供の年からすると……5、6年前?付き合ってた奴いたっけ?全然…………覚えがない。


「はじめましてパパ。私はルンです。」

「はじめましてパパ。僕はポロです。」

「パパ言うな!」

まだ俺の子と決まった訳じゃない!!

「ルンとポロ?」

いや、お前ら…………それ、犬の名前じゃないんだから…………

「二人でつけたんだよね~!」

「ね~!」

そう言って二人は顔を見合わせた。

「二人でつけた?お互いに名前をつけあったのか?」

なんだ。あだ名か…………。


「悪いが、お前達は引き取れない。母親の所に帰れ。」

冷たいと思われようが仕方がない。こいつらが、自分の子供かどうかわからないからじゃない。それもなくはないけど……。この姿じゃ、自分1人で生きて行くのもやっと…………ん?待てよ?こいつら使える?一応人間だし……。


でも…………俺1人で本当に、幼児二人を面倒見られるか?


俺が迷っていると、女の子の方が俺の足を取り、自分の頬につけて来た。な…………何だよ!


「にくきゅう柔らかい。」


お前こそ!何なんだ?この柔らかさは…………!!ヤバイ!!


すると、男の子の方が脇から腹にかけて優しくさすってきた。

「お腹の毛ふさふさだねぇ~」


き、気持ち良い~!めちゃくちゃ気持ちいい!おい、止めろ!そんな所触るな!


俺は思わず腹を出して床に寝転がってしまった。これは…………く、屈辱だ…………!犬じゃないのに!!


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