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幸せの記憶


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夢を見た。最近、よく白昼夢を見る。


ルンとポロの学校に呼ばれて駆けつけると、そこには担任の先生らしき人がいた。

「僕がこの二人の父親です!!」

「犬が…………喋った。」

「姿はこんな野性的ですが、一生懸命育てています!」

先生は驚いて一瞬言葉を失った。

「…………そうだったんですね……。ですが、お父さんが犬……。」

「あ、いえ、狼です!」

そこはちゃんと訂正させてもらった。

「狼というのは前例がないので、とりあえず、校長先生に報告してみます。……!」

え…………?前例があればいいの?ありなの?意外にも、担任に受け入れられた。


すると、その後、校長が入って来た。

「これはこれは、こちらが犬のお父さん?」

俺を見ると、校長は担任にそう訊いた。

「ルンとポロの父親です!」

「うわっ本当に喋った!」

校長は驚いた後、椅子を座り直して、襟を直して話始めた。

「最近では犬も喋る時代なんですね。ほら、昔、携帯会社のCMも白い犬のお父さんでしたよね。」

「はぁ……タレント活動はしてませんけど……。」

校長にも話をして、受け入れられた。


すると、PTA会長のおばさんが殴りこんできた。

「うちのクラスに父親が犬なんていう、あり得ない子がいるというのは本当なんですか!?」

「ええ、そうですね。ちょうどこちらにいるのが……」

「可愛い……。」

PTA会長のおばさんは俺を見ると、まるで赤子を見るような目に変わった。

「まぁ、ワンちゃんだと大変な事もありますでしょう。困った事があったら何でも相談してくださいね。」

おばさん態度変わりすぎ!!

何故かPTAにも受け入れられた。


するとそこへ、高校生のルンとポロがやってきた。大きくなったなぁ……。

「お父さん!」

「あ、こら、こんなところで腹をさするのは止めなさい!こんな所で転がっちゃうだろ~?犬じゃないんだから!こんな所誰かに見られたら………………」

通りかかった生徒に見られた。

「は!恥ずかし~!」

俺は顔を隠して伏せた。


「お父さん~おんぶ~!」

「もうルンは重いから無理だよ~もう腰が痛くなっちゃうよ~!」

「お父さん、高校に来て思うんだ。人間は大繁殖しすぎだと思う。」

ポロは人が多くて驚いたんだな。田舎育ちだったからカルチャーショックか?


「紅葉、内緒だよ?友達の家、塔の上だった。」

それ、タワーマンションとかじゃないのか?高い建物もない田舎だったから驚いたんだろうな。

「紅葉~!紅葉の葉がいっぱいだよ~!!」

相変わらず、落ち葉で遊ぶの好きだなぁ……。


目の前に、紅葉の葉が落ちてきて、俺は我に帰った。立ち上がり、辺りを見渡すと、そこはいつもの山の風景が広がっていた。


なんだ……。やっぱり夢か……。


それから、何回の秋を迎えたか記憶にない。


いつものように、赤いオーバーコートを着た葵が山に来た。葵は、俺が見つけ易いように真っ赤なコートを着て来る。まるで赤ずきんだ。その赤ずきんに手を引かれ、二人の子供が山にやってきた。


二人は、紅葉の葉とじゃれあっていた。それはまるで、落ち葉と踊っているようだ。

「すごーい!葉っぱがいっぱい!」


遠くで子供の笑い声が聞こえた。


めくるめく季節の中で、僕らはまるで、ダンスを踊っているようだった。


春は、舞い散る花びらと共に。


梅雨は、雨と新緑の若葉と共に。


夏は、ホタルの光と川の水しぶきと共に。


秋は、色づいた落ち葉と共に。


冬は、真っ白な雪と共に。


その笑顔を見た時間は、その笑い声を聞いた時間は、とても、それはとても幸せな時間だった。


季節はまるで、泡沫のように移ろいやすい。幸せな記憶が、無数のシャボンの泡玉のように、空に舞い上がっては儚く消えた。


どうかこれからも、泡沫の季節と踊っていて欲しい。


そうすれば、俺は…………自然と、ずっとみんなの側にいられる気がする。


「リン~!ヒロ~!」

「ママ~!見て見て~!」

「僕も僕も!」


その笑顔で、いつまでも踊っていて欲しい。


いつまでも、いつまでも、笑っていて欲しい。


最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。年内にはなんとか書き上げたい!そう思って進めました。クリスマスに終わって良かった……。これで、無事年が越せそうな気分です。


メリークリスマス!良いお年を。

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