三圃式農業
(しかし困ったものだ。怠惰ではこっちでイベントを用意しなければならない)
(何にします?)
(二歳児に戦闘は難しいから農業だろうな)
(それじゃ、舞台は田舎、彼が産まれた家はそこの領主と行きましょう)
青年の生まれ変わりはナーシュと名付けられた。
「ナーシュ、もう二歳だから一緒に領地を見て回ろうじゃないか」
「あい」
ナーシュはめんどくさいと思いながらも、ずっと家に居るのも退屈に思っていたので同意した。
馬車で揺られ揺られて田園地帯を行く。
「ここいらは全部小麦畑なんだが、年々収穫量が下がって困っているんだ。ナーシュは何か思い付くことは無いか?」
そう言ってから父親は苦笑いをする。
「二歳の子供に判るものじゃなかったな」
ナーシュはもやっとした。直ぐに神様に付けて貰っていたナビゲータースキルに脳内で問い掛ける。ナビゲータースキルとはネットワーク上を軽く検索するだけで得られる情報を回答してくれるスキルである。
『小麦の収穫量が下がる原因は何だ?』
ナビゲータースキルは答える。
『連作障害です。毎年小麦を栽培したことで地力が低下しています』
『連作障害?』
『人が毎日同じものを食べると飽きるようなものでしょう』
『なるほど』
(え? そんな説明でいいの?)
(だってめんどくさいし)
『それと小麦の収穫量をアップさせる方法は無いか?』
(これはどうしよう……)
(三圃式農業でいいんじゃない? 六圃式になったらもう解らないでしょ?)
(じゃあ、それで)
『三圃式農業による輪作が有ります。耕作地を三つに分け、春蒔きの豆の栽培、秋まきの小麦の栽培、地力回復のための休耕を一年毎に入れ替えて行います』
「とうたま、りんしゃくをしゅればいいのでしゅ」
ナーシュの発音はまだはっきりしないが、父親は聞き取って真剣に問い直す。
「輪作? それはどう言うものだい?」
ナーシュは三圃式農業を説明した。途中で忘れた部分はナビゲータースキルに尋ねながらだ。
「それは素晴らしい。早速やってみようじゃないか」
父親は即断して農民に指示を出す。
翌日。三圃式農業は大成功。三倍の収穫を得た。
「ナーシュ様の言う通りだった!」「何て素晴らしいご子息なんだ!」「ナーシュ様さえ居ればこの領地は安泰だ!」
農民は口々にナーシュを讃えた。
(ちょっとー、翌日って何よ?)
(だって、待てないだろ?)
(常識で考えなさいよ)
(でも、あいつは気付いてないぞ?)
(あー、それでもー、三倍もおかしいでしょ。三つに分けたら耕作地は三分の一なんだから、もし三倍の収穫が有っても一年目は同量よ? 全体で三倍だったら九倍の収穫量が必要なのよ? どう考えても無理でしょ)
(でも、あいつは気付いてないぞ?)
(あちゃー)




