這い寄る混沌
(やれやれなのじゃ)
(いやいや、仕事がもう終わったように言わないでください)
(終わったじゃろ)
(終わってませんよ。だいたい、どうして自分から混沌に飛び込んだんですか?)
(それはじゃな……、その方が早く終わると思ったからじゃ。てへぺろっ)
(てへぺろっじゃないですよ。とにかくまだ終わりませんからね)
ナーシュは改めてガイドブックを見る。
タイトルは「スローライフの名所百選」。キャッチコピーは「あなたにも簡単! さあ今こそライフをスローしよう!」。
「あ゛っ!?」
よくよく見ると、突っ込みどころ満載だ。
「自殺の名所じゃねぇか!」
ナーシュはガイドブックをべしっと地面に叩き付けた。
「それも勧めてやがる! あり得ねぇだろ!」
前世にもライフをスローする方法を書いた本は有ったが、さすがに勧めるような本は無かった筈だ。
「あーもー、糞が!」
ナーシュはアイテムボックスから敷物を取り出して適当な所に敷くと、ぼーりぼーりと腹を掻いて不貞寝する。
寝っ転がってみれば長閑な場所だ。自然と瞼も重くなる。
ところが。
「早まってはいかんのじゃ~~」
地の底を這うような声。それもどこかで聞いたような台詞だ。
背筋に悪寒を感じて身構えるナーシュ。声のした方へと視線を向ける。
年寄りの姿をした混沌が這い寄っていた。
「えんがっちょーっ!」
奇声を発しつつ、ナーシュは逃げ出した。強さ以前の問題で、気持ち悪さが先に立ったのであった。
(失礼な奴じゃな)
(いやあ、あれは普通の反応でしょう)
(どうしてじゃ?)
(ご自分では気付きませんでした? う○こそのものでしたよ)
(酷い特殊メイクもあったものじゃの……)




