タイザイ4
(今度の案内役はヨロインだ)
(騒動を持ち込んで主人公を翻弄する役回りってこと?)
(今回はそこまではいかないよ)
ナーシュはフロイン、ミロイン、ヨロインの三人に魔王の手掛かりについて尋ねた。
「知らぬのじゃ」
「ご主人様しゅき!」
一応尋ねたが、ナーシュとてフロイン、ミロインに期待してはいない。
「ダンジョンは魔王が創ったと言われています。だからきっとダンジョンに魔王に繋がる手掛かりが有ります」
ヨロインは自信満々に答えた。
「そうかな?」
「そうです!」
ナーシュは懐疑的だったものの、言い切られて反論できる根拠も無いので最寄りのダンジョンを探索することにした。
そしてダンジョン。ナーシュが剣で斬り伏せた魔物がグゲェェと断末魔の悲鳴を遺して光と消える。
「魔物が何か落としたのじゃ」
「割引券? 何の?」
「判らぬのじゃ」
「割引券とは何て素敵な響き! これはきっと良いものです!」
「……ヨロインがそう言うなら拾っておくか」
「それが良いのです!」
それからも次々に襲い来る魔物を倒す。不思議と魔物は家畜や野菜が変異したようなものばかりで、落とすのは全て割引券だ。
「魔物は弱くても、こう数が多くちゃ……」
「そうですね! 割引券がもう抱えきれないほどに!」
「抱えきれないなら捨てていいんじゃないか?」
「いいえ! これはきっと良いものです!」
「そうか……」
そうこうしながらダンジョンの最奥に到着。そこにはお仕着せを着た女性が待ち構えていた。
「いらっしゃいませ~。お席にご案内します~」
「え?」
「さあさ、どうぞどうぞ」
あれよあれよと言う間に席に座らせられるナーシュ達。
「こちらメニューになります~。お持ちの当店の割引券は券面の金額分だけ割り引きをするもので、枚数制限はございません。お気軽にご利用ください」
「え?」
「では、ご注文がお決まりでしたらお申し付けください~」
ナーシュはメニューに目を落とす。色々な料理が載っている。どうやらここでは食事ができるらしい。
「我はこれとこれを頼むのじゃ」
「私はこれとこれです」
「これとこれとこれが食べたいのでしゅ」
「俺はこれとこれかな」
「かしこまりました~。しばらくお待ちください~」
思いの外料理が届くのは早かった。
「美味しいでしゅ」
「美味いのじゃ」
「美味しいです」
「そ、そうだな……」
料理は予想外に美味く、四人はぺろりと平らげた。
「食った食った」
「満足です」
「満腹なのじゃ」
「お腹いっぱいでしゅ」
「じゃあ、出ようか」
「そうするのじゃ」
「お会計お願い!」
「かしこまりました~」
ナーシュは割引券で支払ったが、抱えきれないほどの割引券は幾らも減っていない。
「これは次回使える割引券になります~」
支払った分の二割がまた割引券として戻された。
「どうすんだ? これ……」
ナーシュは考える。
「どっかに捨てればいいか」
割引券は適当に処分することにして最奥から出ようとしたのだが、見えない壁に阻まれた。
「破れない壁!?」
「ふっふっふ。我はこのダンジョンの主にして七つのタイザイが一つ、ファミレスだ」
「ここから出せ!」
「ここを出たくば割引券を使い切るのだ」
「マジで?」
「マジで。断っておくが、料理を残したらおかわりだ」
「ええっ!?」
ナーシュは力尽くで押し通ろうとしたが、何故か見えない壁には全く通じない。
「仕方ないのじゃ。使い切るよう努力するのじゃ」
「仕方ないですね」
「でしゅ」
「ええっ!?」
早々にギブアップしたフロイン、ミロイン、ヨロインを横目にひたすら料理を食べ続けるナーシュであった。
(どうしてドロップが割引券?)
(本当は食材をドロップするんだけど、全部ファミレスで使う代わりの割引券なんだ)
(何て自給自足が簡単なダンジョン!)




