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四天王1

(いやぁ、前回は大変だった)

(何が?)

(何度リテイクしたことか)

(どこで!?)

(ヨロインがハンカチを落とすところだよ。彼がなかなか見つけてくれなくてね)

(「ちょくちょく」ってそんな意味!?)

(うん。見つけたのに無視するなんてことをされなくて済んだのは助かった)

(見つけられたら方法を変えなきゃいけないものね……)


 ナーシュはフロイン、ミロイン、ヨロインの三人と一緒に旅立った。

 その行く手に男が立ち塞がる。

「やあ、ヨロイン。君から会いに来てくれるなんて、やっと僕の愛を受け入れる気になったんだね?」

「違いますわ! 貴方を倒しに来たのですわ!」

「ほほう。四天王の僕をどうやって?」

「こちらには勇者様が付いてますのよ」

 ヨロインは「え? 俺?」と戸惑うナーシュを引き摺って前に押し出す。意外に強い力と押し出しだ。

「ふうん。君が勇者かい? 四天王たる僕を邪魔をするなら容赦しないよ?」

「いや、俺は……」

 ナーシュは何が何だか判らない。やたら四天王を強調するのが気になるだけだ。

「そうかい。僕には答える価値も無いと言いたいのだね。いいだろう。そっちがそのつもりなら、こっちもそのつもりで君達を恐怖のずんどこに叩き込んであげるよ」

 そう言うなり、男は足踏みをしつつ、くの字に曲げた両腕を右へ左へ突き上げるように振って、「ずんずんどこ、ずんずんどこ、ずんずんどこ、ずんずんずん」と唄い、踊る。

 異変は直ぐに現れた。様子を見守っていた野次馬達から「手が勝手に!」「足がひとりでに!」と叫び声が上がる。フロイン達も例外ではない。「ずんずんどこ、ずんずんどこ、ずんずんどこ、ずんずんずん」。

「止められぬのじゃ!」

「ご主人様しゅき!」

「誰か止めて!」

 ナーシュだけは各種耐性により平気である。しかし他の人にとっては危険極まりない。落としてはいけないものを持っていたり、踏んではいけないものが足下に有ったりしたらとても危険だ。だからナーシュは男に言う。

「ちょっと、あんた。それを止めろよ」

「僕の技が利かないのか! これならどうだ!」

 男は「ずん、ずん、どこ! ずん、ずん、どこ!」と一つ一つの動きに力を籠めて踊り出す。それに合わせて野次馬達の一つ一つの動きにも気合いが入る。「ずん、ずん、どこ! ずん、ずん、ずん!」。

 しかしナーシュには利かない。男は焦り、更に気合を籠めて踊る。それでもナーシュには利かなかった。目前に迫ったナーシュに冷や汗を流す。

 刹那、男は閃く。

「くっ、さては貴様、とんでもない音痴だな!」

「誰が音痴じゃあああ!」

 何かナーシュの柔らかい部分に突き刺さったらしい。ナーシュの鉄拳が炸裂し、彼方まで飛んだ男は星になった。

「怖ろしい奴だったのじゃ」

「ご主人様しゅき!」

「さすが勇者様ですわ!」

 そして野次馬達も歓声を上げる。四天王の脅威から解放された瞬間であった。


(うっし! みんな良い仕事をした!)

(踊りがよく合ってたわねー)

(そうでしょ。そうでしょ)

(でも思うんだけど、あんたって変に理屈っぽいのに変なところでぶっ飛んだことしちゃうわよね)

(失敬だな、君は)


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