タイザイ1
(フロインはエルフ耳ってことだけど、エルフなの?)
(どうだろう? あまり意味は無いよ)
(おい……)
ナーシュとフロインはダンジョンの奥へと進んでいた。
「ここに見覚えはない?」
「すまぬ。きっと私が探索していたのとは別のダンジョンじゃ」
ナーシュの当ては外れた。フロインがこのダンジョンに別の入り口から入ったのなら、そこから出られると考えていたのだ。
「仕方がない。一番奥まで行こう。そこなら何か判るかも知れない」
「そうじゃな」
二人は突き進む。フロインも殊の外強く、出てくる魔物を鎧袖一触にする。ナーシュも言うに及ばず、無双する。
そして最奥。その手前の致命的な罠もナーシュは踏み潰し、フロインの手を取って侵入を果たした。
「よく来た。人間」
突然声が響いた。
「誰だ!?」
「随分なご挨拶だな。我はこのダンジョンの主にして七つのタイザイが一つ、ハシノシタだ」
「ダンジョンの主なら外に出られる方法を知っているだろう? 教えてくれ!」
「不躾な奴だな。まあ良い。そこに橋が在るだろう? その下で眠るのだ」
「はあ!?」
「信じぬのなら構わぬ。お前達がこのダンジョンから出られぬだけのこと。我の知るところではない」
「くそっ」
「私は橋の下で構わぬぞ」
歯噛みするナーシュにフロインは言った。
「そうだな。試すしかないよな」
二人は言われた通りの場所で、ぴちゃん、ぴちゃん、と水が滴る音に苛つきながらも眠った。
そして目覚めた時、日の光が差し込む橋の下に居た。
「青空だ……」
(やけにすんなり最奥に行ったわね)
(鎧袖一触だからね)
(それでももう少し苦戦とかしないの?)
(ファッションピンチがお望みか?)
(あー、うー、そのー、そ、それにしても簡単にダンジョンから出られたわね!)
(出られない結果なんてあり得ないからね)
(身も蓋もないわね)