最期の戦い
(子供編もこれで終わりだよ)
(ふーん)
「た、大変だあ! 魔物だ! またまた魔物の大軍が押し寄せて来た!」
冒険者ギルドに冒険者が駆け込んで来た。受付嬢が問い直すように叫ぶ。
「魔物の大軍ですって!?」
「そうだ! 見渡す限りの魔物だ!」
それを聞き、噛ませ犬役が声を荒らげる。
「ナーシュは!? ナーシュはどこだ!?」
「それが、今お昼寝中なの!」
「お昼寝だと? お昼寝かぁ……。だったらしょうがねえな。俺が行く」
「行ってどうなるの!?」
「時間稼ぎくらいできらぁ。その間にみんなは逃げてくれ」
「そんな!」
「わしがギルド長じゃっ!」
「ええっ! ギルド長まで!?」
「何だよ、爺さん。年寄りの冷や水は身体に良くないぜ」
「わしがギルド長じゃっ!」
「ははっ。それならしょうがねぇな」
何がしょうがないのか誰にも理解できないが、彼らが良いのなら良いのだ。
二人は草原に行く。そこは魔物に埋め尽くされている。
「こりゃ、骨が折れそうだ」
「わしがギルド長じゃっ!」
「あなた!」
妻の声に噛ませ犬は振り向く。
「お前! 早く逃げねぇか!」
「いやよ! わたし達はずっと一緒よ!」
「お前!」
「あなた!」
「わしがギルド長じゃっ!」
「おい、爺さん。冷やかさないでくれよ」
「わしがギルド長じゃっ!」
「そうだな、その通りだ」
何がその通りなのか誰も知らない。
「お前、俺の活躍をそこでしっかり見ていろよ」
「ええ、あなた!」
「わしがギルド長じゃっ!」
そして二人は最期の戦いに挑むのだった。
(ええ話や~)
(待てや、こら!)
(まっ、女の子がなんてはしたない言葉遣い)
(あんたこそ、おねぇ言葉を止めなさい!)
(またカリカリと、カリカリ梅でも食べてるのかい?)
(カリカリ梅はもういいから、あっちよ! どうしてあいつが出てこないのよ! それじゃ意味無いでしょ!)
(ええー、ここで終わればいい話で終わるじゃないか)
(駄目でしょ)
(ちぇー)
「まったく、らしくないことを……」
「お? ナーシュ? 昼寝はもういいのか?」
「ちょ……。昼寝がいつからそんな大層なものになったんだ……」
ナーシュは溜め息を吐く。
「とにかくここは任せてくれ」
「お、おう」
ナーシュは魔物の群れに手を翳す。
\どーん/
魔法一発で魔物の群れは壊滅した。
「ははっ! すげぇ! さすが俺が育てたナーシュだ!」
「わしがギルド長じゃっ!」
「お、おう。そうだな。俺と爺さんとで育てたナーシュだ!」
「育てられてないから……」
「細かいことはいいんだよ! 凱旋だーっ!」
「やれやれ」
しょうがないと、苦笑いするナーシュであった。
(あー、うー)
(あまりの素晴らしさに言葉も無いようだね)
(あまりのあほくささに呆れたのよ!)




