ヘルフレイム
(そろそろ魔法を使った戦闘だ)
(そうね。魔法の有る世界だしね)
(そそ)
「た、大変だあ! 魔物だ! また魔物の大軍が押し寄せて来た!」
ナーシュが冒険者ギルドに入るのを見計らったように、冒険者は駆け込んで来た。受付嬢が問い直すように叫ぶ。
「魔物の大軍ですって!?」
「そうだ! 今度の魔物にも包囲を遮られて包囲殲滅陣が利かない!」
「そ、そんな! この町はどうなっちゃうの!?」
ナーシュはとんでもないことが起きているのを知った。だが、現場を見なくては話にならない。
「とにかく案内してくれ」
「判った。こっちだ」
冒険者はナーシュを草原へと案内した。
草原には見渡す限りの魔物の群れ。地を駆ける鳥の魔物だ。移動が速く、直ぐにでも迎撃しなければならない。
ナーシュが確認する間にも、ナーシュの父親や他の冒険者らも続々と草原に到着する。そして父親が魔物の群れを前に嘆く。
「くそっ! あの大軍を殲滅できる魔法でも有れば!」
ナーシュはナビゲータースキルに尋ねる。
『何か無いか?』
『ヘルフレイムの魔法はいかがでしょう?』
『どんなものだ?』
『広域を炎で焼き尽くす魔法です』
ナーシュは早速父親に進言する。
「父さま。俺に任せてください」
「どうするんだ?」
「こうするんです」
ナーシュは右手の平を魔物に向ける。
「ヘルフレイム!」
力有る言葉に合わせ、魔物を覆い尽くす炎が上がる。
ぐげーっ!
魔物の断末魔が轟いた。
(撤収ーっ! 地下に急げーっ!)
(おーっ!)
(ま、待ってくれーっ!)
(こっちだーっ!)
(もう、残ってないかーっ!?)
(よーし、撤収完了!)
(カモフラージュ音と共にデコイ散布!)
ぐげーっ!
(状況終了!)
ヘルフレイムの炎が消える。動く魔物の姿は全て消えていた。一面に残されたのはこんがり焼けた鳥肉だ。
暫しの静寂の後、歓声が巻き起こる。「うおーっ!」「やったーっ!」「魔物は全滅だーっ!」「ローストチキンだーっ!」「今日はチキンパーティーだ!」。
父親はナーシュに笑い掛けた。
「まさか、魔物を倒すだけでなく、ローストチキンにしてしまうとは驚いたぞ」
「そ、そうかな?」
ナーシュは笑顔で返しながら「俺、また何かやっちゃった?」と内心で独りごちるのであった。
(鳥肉が勿体ないわね……)
(後でスタッフが美味しくいただきました)
(嘘、おっしゃい)




