井戸
(今度は物作りだ)
(魔法の有る世界なんだから、魔法を組み込んだものなの?)
(……それは盲点だった)
(おい!)
父親がナーシュの前で嘆く。
「はー、困った。東の領地が日照り続きで飲み水も足りない」
ナーシュはナビゲータースキルに尋ねた。
『水不足を解消するいい方法は無いか?』
『簡単なものには井戸が有ります』
ナーシュは早速父親に進言する。
「父さま、井戸を掘れば良いのです」
「井戸? 井戸とは何だい?」
ナーシュは説明する。内容はナビゲータースキルからの受け売りだ。
「それは素晴らしい!」
父親は跳ねるように立ち上がった。
「井戸職人だ! 井戸職人を呼べ!」
「はい、井戸職人でございます」
「おお、井戸職人。直ぐに東の領地で井戸を掘るのだ!」
「かしこまりました」
翌日。
「掘れました」
「おお! 滾々と清水が湧き出しているではないか!」
釣瓶を落として水を汲み上げて住民みんなで回しのみする。
東の領地の住民も大喜び。「ばんざーい!」「乾きに苦しまずに済むぞ!」「ナーシュ様の知恵のお陰だ!」。
続くのはナーシュコールだ。「ナーシュ! ナーシュ! ナーシュ! ナーシュ!」。
「いやいや、それほどのことじゃないですよ」
謙遜しつつも不敵な笑みを浮かべるナーシュであった。
(ねぇ、既視感が有るんだけど?)
(そ、そうかな?)
(家の時と同じパターンじゃないの)
(ばれたか。ディテールは変えたんだけどな……)
(どうしてばれないなんて思ったのよ……)




