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包囲殲滅陣

(そろそろ戦闘を噛ましてみるよ。今回は軍師的に)

(軍師って言うと、陣形とか戦術とかよね)


 ナーシュがギルドに行った時、受付嬢以外の人気(ひとけ)が無かった。そこに……。

「た、大変だあ! 魔物だ! 魔物の大軍が押し寄せて来た!」

 重傷を負って足を引き摺った冒険者が息も絶え絶えにギルドへと駆け込んで来た。受付嬢が問い直すように叫ぶ。

「魔物の大軍ですって!?」

「そうだ! 迎撃に出た兵士もギルド長も冒険者もみんな重傷を負って戦えなくなってしまった!」

「そ、そんな! この町はどうなっちゃうの!?」


(ちょーっと、待った)

(どうしたのかな?)

(ギルド総出で迎撃に出たなら受付嬢も知ってる筈でしょ? どうして初めて知ったようにしてるのよ?)

(そこ言っちゃう? 勿論彼への説明のためさ)

(……ガバガバね)


 ナーシュはとんでもないことが起きているのを知った。しかし肝心な情報が足りないので冒険者に尋ねる。

「敵の戦力は?」

「主力だけでもヒポグリフが100、グリフォンが100、ヒュドラが100、タイタン(巨人)が100、トロルが100。いずれもSランク以上だ!」

 Sランクの魔物はBランク冒険者100人でどうにかできるかな? と言う強さである。

「こちらに残っている戦力は?」

「それは……、ああ、呼びに行かせていたのがちょうど来たようだ。ナーシュ君の他にはたまたま自宅を警備していた彼ら3名だけだ。俺は両脚が折れててもう戦えない」

 集まったのはひょろひょろ体型のFランク冒険者3名であった。

「戦力は500対4ですか……」

 ナーシュはナビゲータースキルを駆使して有効な戦術が無いかを探す。そして幾度となく脳内にちらついた陣形に目星を付ける。

「もしかしたら何とかなるかも知れません。案内してください」

「判った」

 重傷を負った冒険者は足を力強く踏み締めながら案内した。


(……)


 そして現場。重傷を負った冒険者らで野戦病院と化している場所に着いた。遠くに魔物の群れが見える。


(…………)


 ナーシュは敵の様子を観察する。

「あれですか……。あれなら考えている戦術が決まれば何とかなりそうです」

「それはどのくらいの確率で勝てるんだ?」

「戦術が決まればですけど、99%の確率で勝てます」

「ほんとか!? た、頼む! その戦術で助けてくれ!」

「判りました」

 ナーシュは自宅警備の冒険者3人に戦術を説明し、各々の持ち場へ送り出す。

 冒険者3人はナーシュからよく見えるように障害物の無い場所をとことこと駆け、魔物の群れに回り込む。左に1人、右に1人。向こう側に1人。向こう側に行ったらナーシュからは見えないので、配置に着いたところで狼煙を上げる。


(………………)


 狼煙が上がった。

「今です!」

 ナーシュの号令に合わせてナーシュと回り込んだ冒険者が魔物の前に躍り出る。魔物の四方を囲んで包囲殲滅陣の完成だ。

「ぐ、ぐわぐわっ(か、囲まれた!)」

「ぐがぐがぐがが!(逃げ道が無くなった!)」

「ががー! がががががが!(うわーっ! どうしたらいいんだ!)」

 包囲されたことで、魔物達がパニックに陥った。無茶苦茶に暴れ出した魔物達はお互いに殺し合い、最後に残った一頭もそれまでの殺し合いの傷が元で倒れ、息絶えた。

 暫しの静寂の後、歓声が巻き起こる。「うおーっ!」「やったーっ!」「魔物は全滅だーっ!」「町が救われたぞーっ!」。

 続くのはナーシュコール。「ナーシュ! ナーシュ! ナーシュ! ナーシュ!」。

「いやいや、たまたま策が当たっただけですよ」

 謙遜しつつも鼻高々なナーシュであった。


(ずこーっ)

(擬音を口で言う人を初めて見たよ)

(ほっといて)


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