薬草採取
(毎度お馴染み薬草採取だ)
(ロールプレイングゲームのお使いクエストとしても定番よね)
(この世界もそれが元になってるからね……)
(でもおかしなものよね。誰でもできることになっているとことか)
(そうだね。山菜摘みだって知識も無く摘んだら毒草を摘んで食中毒を起こすのがオチだよね)
(同じことにならない?)
(そこは大丈夫。彼は鑑定スキルを持っているからどれが薬草か直ぐに判るんだ)
(鑑定は違わなくない?)
(細かいことはいいんだよ。一つで色々できた方が便利じゃないか)
(大雑把ね……)
ナーシュが冒険者ギルドに登録た翌日。
「クエストの手順を憶えるために薬草採取をやってみてね」
受付嬢はナーシュに言った。
「解りました」
ナースも前日に受けた説明だけでは心許ないと感じていたので頷いた。実際に試してみるのが一番である。
受付を済ませ、受け取った依頼票をアイテムボックスに入れる。
「ア、アイテムボックス!?」
ギルド内がざわめいた。「アイテムボックスなんて初めて見たぜ」「持ってる奴なんて本当に居たんだ」などと言うひそひそ声。
ナーシュは「一般的じゃなかったのかぁ。やってしまったな」と内心で独りごちる。周りの様子には気付かないふりだ。
「いってらっしゃーい」
受付嬢の送られて、ナーシュは草原に行った。
「鑑定、薬草!」
鑑定スキルは目の前のものが何かが判るだけでなく、探しものがどこに在るのかも判る優れものだ。薬草を示すマーキングが点々と視界に広がる。
「ゲット!」
ゲットは任意の範囲のマーキングしたものを拾うスキルだ。薬草が瞬間移動したようにナーシュの足下に積み重なって行く。
「これは多すぎだろ」
薬草の山の高さはナーシュの背丈を超えた。しかし、折角採取したのだからと全てアイテムボックスに入れる。勿論クエストも達成だ。報告して完了させるだけである。
「ただいま」
「え? ナーシュ君? 何かあったの?」
ナーシュの早すぎる帰りに、受付嬢が目を丸くした。
「いえ、クエストが終わったものですから」
「ええっ!? もう?」
「はい。これです」
ナーシュはアイテムボックスから次々に薬草を出す。
「ま、待って! これ、どれだけ有るの?」
「これの100倍くらいでしょうか」
「100倍! こ、こっちに来てくれるかな?」
「はい」
受付嬢はナーシュを報告専用窓口に案内した。
「このテーブルの上に出してくれるかな?」
「はい」
ナーシュは山盛りの薬草をテーブルの上に出した。算定された報酬額は金貨100枚だ。金貨1枚で庶民1人が1年間暮らせる。
「す、凄いわ! 何て素敵なの!」
周りの冒険者もざわめく。「あの量を見たかよ」「何て採取の腕だ」「それにあのアイテムボックスの容量」などとひそひそ声。
やれやれ少しやりすぎてしまったようだと独りごちるナーシュであった。
(ねぇ、アイテムボックスを始めて見る人が、どうしてであれでアイテムボックスだって判るの?)
(不思議だねー)
(笑い事じゃないわよ)
(彼は気付いてないから大丈夫さ)
(それに、薬草をあれだけ独り占めしたら他の人はどうなるの? 薬草採取ができなくなるじゃない)
(世界によっては薬草を高価なものにして、大勢の冒険者がその採取で生活しているようにもできるけど、ここは違うんだ)
(どんな風に? 取った端から生えるとか?)
(地下茎から掘り起こさなけりゃ、気付いた時にはにょっきりにょきにょきだから、そんな感じでもあるんだけど、それとは関係なくこの世界じゃ薬草採取は彼専用のクエストなのさ。だってあれ、本当は薬草じゃないし)
(ええ!? じゃあ、採取したあれはどうなるの?)
(総菜にでもする人が居なければ捨てるだけかな。お通じが良くなるとかの薬効が無い訳じゃないけど)
(ギルドは大赤字じゃないの……)
(まあ、そうだねぇ)
(で、あれって何なの?)
(イタドリ)




