第8話 化物 (新)
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「えーーん!!」
メルティアの鳴声が響き渡る。
「だ、大丈夫か?」
俺、アマロは流石の大泣きに慌てる。
「あーあー。そら大の大人でも物凄く痛いのにこんな子供にそんな攻撃したらこうなるだろうな」
やれやれと頭を掻きながら言う父、ヴァーダ。
「ど、どうした!?」
「何事だ!?」
大きな鳴き声で近くにいた町の人達が集まって来た。
「ああ、悪いな皆。メルティアが神戦試合で受けた痛みで耐えられなかっただけなんだ」
何があったかを説明する父さん。
「うっ。うぐっ。ぐすっ」
皆が集まって来たことに気が付き、恥ずかしさからか必死に泣き止もうとするメルティア。
「おい、ヴァーダ。こんな小さな子に何て攻撃をするんだ。少し考えれば分かるだろ!」
起こり気味に父さんに言う町の人。
「いやいや、俺じゃない」
「嘘を付け!神戦試合が中断される程の攻撃力を出せるのはこの町で一番のお前しかいないだろ!」
突っかかってくる町の人達。
「メルティアちゃん。誰に泣かされたの?」
否定し続ける父さんでは話にならないと思ったのか、メルティアに直接聞く、町の少しばかりふくよかなおばちゃん。父さんもさっさと俺と言えばよいのに。どうせすぐにばれるんだから。
「ぐすっ。んっ」
まだべそをかきながらも俺を指差す。
「ヴァーダさんの息子さんよね?」
おばちゃんが父さんに確認を取る。引き籠り過ぎて小さな町でも顔を覚えられていない。
「あ、ああ」
「もう、顔を見ないと思ったら悪い育て方をしたのね、まったく・・・」
何故か父さんを悪く言う。
「あ?」
「あら、やっぱり。悪い子に育っちゃって。フェンリさんは何をしているのかしら」
遂、関係のない父さんを悪く言われて反応してしまったらそんな事を言われた。
「アマロちゃんだったかしら?女の子に暴力をふるっちゃ駄目って教わらなかったのかしら?」
「暴力何て振るっていない。神戦試合をしていただけだ」
神戦試合が暴力として成り立つならこの世界が色々とおかしい事になる。悪用して甚振っているとかなら兎も角、純粋な試合に暴力行為と成立させるなんて馬鹿げている。決めつけられて、つい強い口調になってしまう。
「嘘もついちゃ駄目って教わらなかったの?全くどんな教育をしているのかしら。親の顔が見たいわ」
「・・・ここにいるが?」
苦笑いしてツッコム父さん。
「あら、そうだったわ。オホホホ」
う、うざいよ・・・。
「人の話に聞く耳もたずに俺が悪いって決めつけるのは悪い事じゃないのかな?」
笑顔を引き攣らせながら犯行してみる。
「この!子供が大人に口答えをするんじゃないよ!」
まさか、こんな子供に口答えされるとは思っていなかったのだろうか。カッとなって手を振りかぶるおばちゃん。
だがし、その手は空を切った。
わざわざ当たって上げる必要はない。一歩下がって躱した。
「この!」
躱された為に向きになってもう一度振りかぶるおばちゃんの手を父さんが手首を掴むことで止めた。
「あのな。俺も自分の息子に無駄に手を上げられて駄目ッていられるほど出来てないんだわ。それに、明らかにあんたの方が悪い」
「そんな事・・・!」
他の大人達も微妙な顔をしている。何故か素直に頷いてはくれないが。
「ご、ゴホン。メルティアちゃん。どうして泣いていたの?」
「え、えっと」
メルティアは先程のやり取りの間に泣き止み、オロオロとしていた所に分が悪くなったおばちゃんに急に話を振られてびっくりしている。
「し、神戦試合で・・・」
「嘘は駄目よ?」
優しくメルティアには声を掛けるおばちゃん。
(こいつ・・・)
きっと父さんも同じことを思っているに違いない。顔がヒクついている。
「本当・・・」
「じゃ、じゃぁ・・・いくつの攻撃力で攻撃されたの?」
本当という言葉に本当に驚いたようだが、半信半疑に質問を続けた様だ。
「・・・6」
「!?・・・この子が!?」
「・・・うん」
ザワザワ・・・周囲が驚きそれぞれが驚いている。
「因みに俺は、攻撃力9を受けたぞ。超痛かったぞ」
ドヤ!
威張る所じゃない。
それには驚きを通り越して皆信じられないという顔をしていた。
これはあれだ。話でよくある定番の弱い冒険者が絡んでくるような感じに似ている。という事はここで力を見せておけば後からの厄介ごとを防げるはずだ。
「・・・じゃぁ、おばちゃん。俺と神戦試合をしてくれる?」
子供らしからぬ自身に満ち溢れた顔で言われたおばちゃんは若干たじろいだが。
「いいわよ。これで嘘か本当かハッキリするものね」
と、まだ信じていないのかよとツッコミたい内容で返事をしてきた。
★★★★★
「うっ。うぐっ・・・」
結論から言おう。圧倒した。圧倒してやった。
メルティア戦同様、序盤にマナを溜め、『クリエイト(アマロ)・ソード』で皆を驚かせ、『ハイフィジカルフルブースト』で更に驚かせ、それを二回使い、
攻撃力11で切り裂いてやったのだ。さっきのおばちゃんの態度にむかついたからである。否定はしない。その痛みに耐えかね、神戦試合は途中終了となった。必至に目に涙を止めて泣くのを我慢しているおばちゃんを見て内心、ざまぁと思ったりしている。
このTCGの良い所はメルティアとの戦いの時にもやった連続で攻撃をすることが出来る所である。攻撃力と素早ささえあれば俺TUEEEを再現できることが出来るのだ。当然、魔法やらで防ぐことも出来るが、この世界では己の実力がTCGにも影響される。修行やらをしないとカードプールは増えない為にデッキ強化もすることが出来ない。つまり、実際の実力とほぼ比例するのである。
その結果、当然そんな魔法を使用していた為に6歳の子供でこれだけの実力は異常だと皆に知らしめてしまったのである。
「ば、化物だ・・・」
「「・・・え?」」
誰かがそう呟いた。その言葉に俺と父さんは反応した。聞き取れたが、信じられない言葉に耳を疑って聞き返した。
「化物の子だ!」
「ヴァーダは化物の子を育てていたんだ!」
「それじゃぁ、フェンリさんも!?」
「そうよ!そうに違いないわ!」
町の人達が口々にそう言い始めた。
「おい!ちょっと待てよ!神童と言われるようなことがあっても化け物何てありえないだろ!俺の子だぞ!」
父さんが皆に訴えかける。
正直、予想外過ぎた反応にどうしたらよいのか分からなくなってしまい立ち竦んでしまった。
「なぁ、アンタは分かってくれるだろ!?出産に立ち会ってくれたアンタなら!」
「フェンリは呪われていたのよ・・・化物の母体にされてしまったのよ・・・」
「そんな・・・!?」
父さんの言葉が全くと言っていい程聞こうとしてくれない。
「は、早く、フェンリをと、捉えないと!化物を増やされてしまうわ!」
ふくよかなおばさんの声で皆がハッと我に返る。
「そ、そうだ!」
「今は神殿にいるはずだ!」
そう言って、町の人達が駆け出して行った。
「父さん!」
「まずい!」
おばさんの声で俺も我に返っていて、町の人達の行動が母さんに害する事は明白だ。直ぐに家を飛び出した。
「おばちゃん・・・化物って・・・?」
「メルティアちゃんは気にしなくてもいいのよ」
アマロとヴァーダが出て行って何が起こったのかいまいちわかっていないメルティアの問いにおばちゃんは痛みでの涙目でそう答えて、不敵に笑うのであった。