第6話 対メルティア (新)
「ちょっと!人間のユニットなんて奴隷以外にいないじゃない!」
次の日、隣に住んでいる幼馴染メルティアがまたやってきてはそんな事を言う。
「ユニークスキルみたいだし、特別なんじゃないか?」
「パパもそんな事言ってた。今度見に来るって」
メルティアが恩恵スキル授与の時に現れたエイフィの事をじっと見ながらそう言う。
「エイフィは見世物じゃないんだけどなぁ」
俺、アマロもエイフィの事を見ると少し困った顔をしていた。
「・・・それで何の用だ?忙しいんだけど」
「べ、別にもう一度人間のユニットを見に来ただけよ」
顔を背けながらフンッと言い放つように言う。
「・・・こいつはエイフィっていう名前がちゃんとあるんだ。仮に奴隷だとしても人間だ。物じゃない」
「人間でも奴隷であれば物と一緒でしょ?ユニット・・・カードと何が違うのよ」
少し、イラつきながら言ってしまった為か、それに反感するかのようにメルティアプンプン。
「エイフィにはちゃんと意思があるだ。俺は意思がある奴を物だなんて思えない」
「人間以外はみんな物だってパパが言ってたわ!」
私は間違っていないという態度だ。
「・・・そうか。こういう世界か」
この世界にも異種族、つまり獣人族やエルフなどといった、亜人が存在する。俺は魔法の事ばかりで世間の事は余り知らないというか興味はなかった。まずは、強さを求めたからだ。子供の時の方が成長率は良いなら後から覚えれば良い世間など後回しにしていたのだ。
亜人が存在するのは知っていたが、この村には一人もいなかったし、話題にも全くといって良い程話題に上がらなかった。多少の差別などはあったとしても人間至高主義の世界だとは思っていなかった。父さんと母さんもそうなのだろうか。そうでないと願いたい。
「何よ。村で一番偉いパパが言っているんだから間違いないわ!」
(・・・村長の娘だったのか)
と、初めて知るぐらい引き籠っていたのだ。当然村に友達もいない。なのに最近まで滅多に顔を出さなかったに2日続けて顔を出しに来る理由は何だろうか。
「結局、何の用なんだ?」
「え、えっとー・・・」
急に挙動不審な動きをするメルティア。エイフィと顔を見合わせ、首を二人で傾げる。
「そ、そう!そのユニットを見に来てあげたのよ!」
今思いつたようにいうメルティア。
「・・・じゃあ、もう用は済んだだろ。帰れ」
「な、何よ!帰るわよ!・・・フンだ!」
メルティアプンプンしながらバンッとドアを勢いよく閉めて出て行った。
「・・・言い方」
「いや、だってさ・・・」
エイフィが言い方が強いと注意してくる。
「でも、お前も腹が立たないのか?」
「・・・こういう世界だからしょうがない。・・・それに相手は子供。・・・大人気ない」
「・・・いや、一応俺も子供なんだが・・・」
あ、顔を逸らした。
「まぁ、いいや。続きをするぞー」
昨日からの引き続きデッキ作成という名の修行に戻るのであった。
★★★ 1週間後 ★★★
バンッ!
「バンッ!」
勢いよくドアが開けられる。声付きで。
「勝負よ!アマロ!」
扉を開け放った少女、メルティアがそう言い放つ。
「・・・何の勝負だ?」
のそのそと出てきながら訪ねる。
「勿論、神戦試合よ!」
恩恵スキルを授かったようだ。
「・・・強くなったらな~」
手をヒラヒラとさせながら呆れ顔で言う。普通の子供が赤子の時から修行している俺に勝てるはずがない。強いユニットを手に入れるには強い魔物を倒さないといけないのだから持っている訳がないのだからなおさらだ。
「な、何よ!?あんただってこの前、恩恵スキルを授かったばかりでしょ!昨日、ラビットやゴブリンだって1枚手に入れたんだから!」
普通の子供にしては優秀なのではなかろうか。この村で一日目でゴブリンも倒せるのはあまりいないらしいし。
「・・・『ゴブリン』召喚」
4体の『ゴブリン』を召喚する。
「・・・お、覚えてなさい!」
顔を赤くして扉を勢いよく開けて出て行った。
★★★ 翌日 ★★★
バンッ!
「バンッ!」
・・・またか。
「『ゴブリン』召喚!」
ズラっと召喚される『ゴブリン』4体。
「さ、さぁ!勝負よ!」
息が少し上がっている。『初心者です』よりも『ゴブリン』の方が1体1体の負担は大きい。やはり6歳で同時に4体も召喚できるのはやはり、普通の子供としてはかなり凄い方だろう。
「だが、断る」
「何でよ!?」
ムキー!
「俺の父さんを知っているか?」
「もちろん知っているわ。村で一番強いんでしょ?」
当然よっていう顔をしながら言う。
「その父さんに俺は勝った」
「え゛っ!?」
・・・沈黙した。
「う、嘘ならもっとましな嘘を付きなさいよ!」
メルティアは平静を装っている。
「嘘を言ってどうする」
「だ、だって。村一番のヴァーダさんにあんたなんかが勝てるわけが・・・」
「おう、来てたのか」
メルティアの後ろ、つまり外から父さんが帰って来た。その際にメルティアが肩をビクっとさせていた。
「お、お邪魔してます」
「何だ?アマロ。メルティアちゃんと仲が良いのか?」
「いや、全く。むしろうっと・・・げふんげふん」
うっとの辺りでメルティアが顔を少し悲しげに歪めたので何とか咳で誤魔化した。
「・・・ん?まぁ良い。アマロも村の子達とは付き合っておかないと友達もお嫁さんも貰えないぞ?な?」
お嫁さんの所でメルティアに顔を向けるとメルティアが顔を真っ赤にする。
「そ、そんな事より、アマロ・・・君がヴァーダさんに勝ったって嘘を付いてるんですけど!」
話を逸らしたメルティアを見て父さんがニヤニヤしている。
「ん?嘘じゃないぞ。まぁ、最初は手加減していたが、途中から俺も本気になったんだが負けた。本当だ」
「う・・・嘘」
ありえなーいって顔をしている。
「な?俺と神戦試合をしたいなら大人の誰かに勝つか・・・せめて良い勝負が出来るようになってからにしてくれ」
・・・あれ?耳に入っていない様子だ。
「それより、父さん今日は早かったね」
「おう。今日は罠を仕掛けに行っていただけだからな」
「そっか」
「じゃ、じゃぁ、その強さを私に見せてよ!」
「え~」
「・・・アマロ。戦ってやった方が、直ぐに終わると思うぞ」
嫌そうな顔をする俺に父さんが耳打ちをしてくる。確かに、ここ最近やたらと絡んでくる。ここはちょっとガツンとしたら放っておいてくれるかもしれない。最低でも勝負勝負とは言われなくなるはずだ。
「・・・はぁ。分かったよろしくお願い。負けても文句言うなよ」
「言わないわよ!私の強さを見せてあげるわ!」
腰に手を当て威張るメルティア。負ける気なんてまるでない様だ。まぁ、そっちの方がやるにしても面白い。最初からやる気なく勝負されるよりかは遥かにマシだ。
(・・・なら俺もちゃんとするか)
「準備は良いのか?」
「勿論よ!」
お互いに掌を向い合せるように手を上げるとそこに父さんも手を翳した。ニッと父さんは見学する様だ。
「「マナデュエル!」」
光に包まれ、不思議空間に移動する。
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