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 警察病院の面会システムは通常の刑務所とは異なっていて、随分規律が緩いようだ。

 

 僕は中央を強化ガラスで遮断された密室を勝手に想像していたのだが、そんな事はなく、面会の旨を伝えたら普通の病院のような個室に通され、監視のための刑務官は離れた入り口で欠伸あくびをしている。

 この調子だと、録音されてる心配もなさそうだ。都合がいい。


 視線をドアからベッドに移すと、そこには患者服姿の母さんが横たわっていた。


 あれから半年が経った。


 あの後、スタンガンで気絶させられた僕は間一髪の所で、踏み込んできた警察官に保護されたらしい。

 母さんは精神疾患が認められ、刑務所への収監ではなく、この警察病院に収容された。

 逮捕当時からずっと放心状態で、ほとんど言葉を喋る事がないらしい。 


「・・・・・・・・・・・・」


 顔を覗き込んでも母さんは反応しない。

 しょうがなく、一人で喋る事にする。 


「やぁ、母さん、久しぶり。元気してた?・・・って元気なわけないか、ハハッ」


「・・・・・・・・・」


「あ、そうそう、姉貴の死体ね。母さんの言った通り、近所の山林で見つかったよ。埋めるの大変だったんじゃない? 父さんと二人で埋めたの? ・・・・・・まぁ、僕の精神を参らせて、やってもいない罪を自白させる前に見つかったらマズかっただろうしねぇ」


「・・・・・・・・・」


「でもさぁ、僕に罪を被せるつもりだったなら、他にいくらでも上手いやり様があったと思うんだけど。まぁ、仕方ないか、母さんも父さんも、あんまり頭良くなかったからね」


「・・・・・・・・・」


「ああ、父さんと言えばさ、なんでまず姉貴を殺したの? 浮気の現場を目撃したなら、父さんの方から殺さない、普通?」


「・・・・・・・・・」


「話は変わるけど、僕は今、親戚のトコでお世話になってるよ。ほら、母さんの妹のミキコさんだっけ? 負い目があるからかなぁ、結構良くして貰ってるよ。昨日なんて寿司だったんだよ? お小遣いまでくれるし、あそこまで露骨に待遇されるのも、ちょっと考えものだよ」


「・・・・・・・・・」


 覚悟はしてたけど、ここまで無反応だと寂しいものがある。しょうがないから、無駄話は辞めにして、言いたかった事だけを告げる事にする。


「いやぁ、流石に驚いたよ、真相を聞かされた時にはさ。まさか母さんがね・・・・・・。でもさ、母さん、ダメだよ。姉貴を殺した時―――」


 身を乗り出して、耳元で囁く。


 

「―――ちゃんととどめ刺してないでしょ?」



「―――――――」


 母さんの眼が、微妙に動いた気がした。

 僕は構わず続ける。


「僕のバットがあった時点で、真っ先に僕が疑われるのは明白だったし、だったらしっかり"殺しとこうかなぁ"って、だって最初の犯人は僕じゃないわけだし、なんたって"いい加減ウザかった"しね。棚から牡丹餅っいうか、漁夫の利っていうか、ラッキーだったよ。そこに関しては感謝してるんだ。もっとも、まさか母さんが犯人で、即行軟禁される事になるとは思ってもみなかったんだけど・・・・・・」


「―――ぁ―――ぅぅ」


 母さんおんなが何か言った気がするが、構うものか。

 

「それにさ、白状すると、ウザかったのはずっと前からだったんだ。良く出来た姉は不出来の弟にとって目の上のタンコブっていうかさ、姉貴ばっかり可愛がってきたアンタだったらわかるだろ? ・・・・・・姉貴の彼氏の話はしたよね? 実はアレ、紹介したの僕なんだ。勿論、ヒドイ男だって知ってたし、姉貴をどんなヒドイ目に遭わせてくれるのかも期待済みでね」


「――――ぅぅ――さ、さぁ―――」


「あれ? そうなると、父さんは死に際に"全て俺の所為なんだ"って嘆いてたけど、実は僕の所為になるのかな? いや、やっぱり運が悪かったんだ。"僕みたいな子供を持った"アンタらの運がさ」


「――――ぁぅ、さ、サト―――」


「そうそう、話は戻るけど、アンタの妹、ミキコさん? 歳のわりには結構な美人だよねぇ。家族の仲も和気藹々(わきあいあい)としててさ、な〜んか気に食わないなぁ。・・・・・・あ〜あ、壊したいなぁ・・・・・・」 

 

「――――ぁぁぁ、サぁ、サト――ルぅ――」


「話はそれだけ。それじゃあ――」


 僕はそう言って、女を独り残し、


「――いってきます」


 部屋を出た。


 勿論、刑務官に頼んで鍵を借りて、自分の手で錠を落とすオプションも忘れない。


 ガシャン


 数ヶ月の軟禁生活に対する意趣返しとしてはスタンガンが足りないけど、僕の気分は晴れやかだ。

 だって僕はコワレタ家族の替わりに新品の家族を手に入れたんだから。

 

 ミキコさんの美人説は冗談だけれども、一人娘のキョウコちゃんは悪くなかったなぁ・・・・・・。 


 さて、これから忙しくなるぞ。










   あとがき


この作品は本来長編で書くべき内容の濃さだったのですが、無理くり短編として仕上げた物です。

故に、難解な箇所が多々あったかもしれません。


作者としては、ストーリーや事件の真相等々を読者様に正しく理解して頂けたかどうか、非常に不安が残る始末です。


感想、評価、質問、誤字脱字、なんでも結構ですので伝えて貰えたら嬉しいです。



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