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プロローグ
夢をみた。
ただただ笑って泣いて、嬉しくて楽しくて、悲しくて寂しくて。全ての感情が惜しみなく溢れ出してそれを受け止めてくれる大切な人たちがいた、あの幸せな世界の夢を。
あの頃ような幸せはここにはないと絶望して、もしかしたら砂つぶ程度でもあるかもしれないと希望を捨てきれなくて。足掻いた時間が何ヶ月何年と続くたびに諦めようとして、諦めきれなくて。手を伸ばしても掴んでくれなくて。心の中の私はもう諦めて楽になりたいと叫んでる。それでも私もその私もいつか、と夢をみている。前のような関係に戻りたいと願うのは罪でしょうか。また前のように笑い合いたいと願うのは無駄なことなのでしょうか。
幸せだった記憶を捨てきれなくて縋ってしまう弱い私に誰か教えてほしい。生きる意味を。生きる術を。
あの日見たソメイヨシノの桜の花びらは広い青空の下で舞うように踊っていた。
この木もあの景色を見せてくれるでしょうか。