七話
大変遅くなってしまって申し訳ありません。
今回も短いです。
テスト結果発表された次の日、学園に着いたので車から降りると何故か異様に多い視線を受けた。男女ともに。
何か、いつも受ける視線より多い気がする。いつもは周りの半分くらいはこっちに向かないんだけど、今日は九割以上はこっちを見ている気がする。
え、私何かやったっけ?
「流石だね美夜子、昨日の今日でこれか」
「悠人お兄様」
同じく私の後に降りてきたお兄様がこの視線を受けながらも呟くように言った。
と同時に周りから黄色い悲鳴が上がる。うん、こっちはいつも通りだな。
お兄様は妹の私から見ても類を見ないほどのイケメン。自分的には久我や鷺原より格段に上だと思う。
常に無表情(私と家族以外には)だけど。そんなお兄様だけどおモテになるのだ、これが。前にも言ったっけ?言ってなかったっけ? まあいい。
何でもあの冷たい眼差しとクールな態度で女子の大体が心を射られるとかなんとか。普通心が折られるもんじゃね?
世のご令嬢って心が鋼で出来てるよね。
というか昨日の今日って何のことだよ。
「それは勿論実力テストに決まってるじゃないか」
「はぁ……?」
全っ然分からん。実力テストで何故こんなにも視線を受けるんだ。
実力テストだよ?実力ということは本気で挑めっていう意味なのに自分手抜いたんだよ?――何か悪いですか。
まぁいいや。ちょっと気になるけど特段何かあるわけでもないしさっさと教室に――、
「おはよう西園寺さん」
――行けば良かったわ、何も今挨拶しなくても良いだろう鷺原よ。
ほらー周りの女子が発狂してんじゃんかー(棒
しかし無視したら後々嫌なことになりそうなので猫を被る。
「御機嫌よう鷺原様、今日は良い天気ですね」
「そうだね。悠人様もご機嫌麗しく」
「ああ、おはよう」
「それにしても、今日はいつもより人が多くありませんか?」
そのまま挨拶だけっていうのは……ナイデスヨネー。
「ああ、三分の二は僕達のせいだけどもう三分の一は美夜子への興味だよ」
「……何故西園寺さんが?」
「あれ、君も分からない?……ああそうか、一年生は分からないよね」
……一年生は?ってどういうことなのお兄様?
「昨日の実力テストで、教養のテストがあっただろう? それで満点を取った美夜子が注目されてるんだ」
「それは、どうしてです? 確かに満点を取ったことは凄いことですが……」
「満点を取ったことによって、『完璧なる淑女』だと証明されたからさ。しかも小学一年生がだよ? 僕だって満点まではいかなかったのにね。流石美夜子、僕の自慢の妹だよ」
…………。
うん?
「多分朝のHRで、各々の担任教師から同級生の女子は美夜子を見本として言動・行動するよう通達されて、美夜子はこれから先リーダーシップを取らないといけなくなると思うよ? 男子の場合は……確か久我君が一番上だったよね? 彼も美夜子と同じような感じじゃないかな。これは学院の伝統なんだよ」
……………………。
んん?
「つ……つまり……?」
「――美夜子、頑張ってね」
…………………………。
あ、ありのまま今起こったことを話すぜ。
朝起きて学校に行くといつもより視線を感じ、それに違和感を憶えた私はお兄様に理由を問うと、今日から同級生の女子のリーダーシップを取ることになるだろうから頑張ってねと言われた。
な…何を言っているのかわからねーと思うが私も何を言われたのかわからなかった…。
「――子、美夜子?」
「ハッ!」
「どうしたんだい美夜子? 具合でも悪いの?」
「い、いいえ、何でもありませんわ。少しぼーっとしてただけです」
「……そう?」
「はい」
頭がおかしくなりそうです。
これは悪夢か? 私は存在消してひっそり生きたいと思っていたはずなのに、学園生活初っ端からやらかしっちゃってんじゃねーかよド畜生。
テスト前の私を全力で殴りたい。
美夜子の中の「ひっそり」は定義が間違っております(笑)
令嬢としては普通の令嬢として(美夜子の家で既に普通ではないですが)、ゲーム中のキャラとしてはひっそりと、という感じの「ひっそり」です。
キャラとしては存在消したいほど薄くはなりたいけど、令嬢としては高飛車でもなく頭が悪いというわけでもなく、逆に気が弱くおどおどすることはない令嬢を目指したい美夜子(それもう完璧な淑女じゃないかな)。
完全に矛盾してますね(笑)