表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
常世封じ道術士 風守カオル  作者: 坂崎文明
第二章 雛流しの呪法
19/26

雛流しの怨霊神

 牛頭天王の霊圧が増して、風守カオルはたまらず膝を折った。

 ほとんど物理的な圧倒的な力でカオルの身体は重く沈み、身動きできなくなっていた。

 まるで牛頭天王に対して(ひざまず)いて拝礼してるように見える。

 悪童丸、犬神、猫鬼も同様で身体が動かなくなってるようだった。


 八坂神社、旧祇園社の鬼神、牛頭天王の霊威は凄まじく、その赤い目は怪しい光を宿し、星のように瞬いていた。

 その顔からは憤怒が吹きだしていて、鬼、修羅、不動明王にも見える彫の深い表情に凄まじい怒りが宿っていた。

 背後には、火炎地獄から燃え盛る炎が吹きだして、車輪のように巡っている。

 右手の長い柄のついた(まさかり)を大地に数回、叩きつけると、地鳴りで大地が凄さまじい震動に見舞われた。


「牛頭天王様、お鎮まり下さい。何故、そんなにお怒りなのですか?」 


 その恐るべき霊圧の嵐のなかで、ひとり雛御前だけがすっくと立ち続けていた。

 数千年の霊齢による呪力のためか、辛うじてだが身を支えていた。


「何故、人は神国日本の国土を穢すのじゃ。京都の人々の雛流しの怨霊がそう告げている」


 朗々と重く響く声が更なる霊流となって、カオル達の身体に叩きつけられた。


「まさか、それは天山原発のことですか?」


 雛御前は十二単衣の袖を押さえて耐えていたが、流石につらくなったのか、ずるずると跪いた。


 天山原発、それは数年前の三月に起こった東日本大震災の際、事故を起こしてメルトスルーを起こした東北の原子力発電所のことである。

 時の政府から政権交代したが、現政権の安東総理は原発の再稼働をもくろんでいたがここにきて、メルトスルーした核燃料のデブリの再臨界現象が確認され、原発の温度が81℃まで上昇していた。

 政府は核燃料デブリの調査のロボットを投入したが、あまりに凄まじい放射線量で往路で故障して帰還せず、調査は頓挫していた。

 

「そうじゃ、大地を穢したまま、何年も放置しておるな。そなたが作った『雛流しの呪法』で京都の人々の怨念をこの祇園社に集めてワシが浄化してきたが、もはや限界点を超えて呪術災害が生まれておる」


 牛頭天王は怒りの表情を保ったまま、諦めとも嘆息ともつかぬため息がもれた。

 

「そうでしたか。お嘆きはごもっとも。私にいい考えがございます」


「そなたに何とかできる問題だと思っているのか!」


 ほとんど大地に身をすりつけていた雛御前に牛頭天王の口から地獄の炎が浴びせられた。

 憤怒の炎が雛御前を焼きつくすかに見えたが、乱れた髪、十二単衣もボロボロになりながら言葉を継いだ。


「安倍清明様は今回のことを『星見の予言』で見通していました。ここに清明様の遺志をつぐ道術士『風守カオル』がいます。()の者の力を借り、清明様の遺産を探せば地龍を操り、大地の浄化も為せると存じます」


 いや、意志なんか継いでないけど。安倍清明の遺産を探すの?

 だいたい『雛流しの呪法』はあんたが作ったなら作ったと説明せい!とカオルは思ったが、牛頭天王の霊威の凄まじさで口を動かすこともできなかった。


「―――うむ、ここはそなたに免じて(いとま)をやろう。見事、地龍を動かしてみせよ」


 いや、それで納得するんかい!

 ちょっと待って、ちょっと待って、牛頭天王!と言いたかったが、霊圧と地獄の業火が熱すぎて汗の流れが止まらないし身体が動きませんわ。

 

 そんな馬鹿なことを考えてるうちに、ふっと身体が軽くなった。

 辺りも夜ではなく、夕闇迫るごく普通の夕方の風景に戻っていた。

 観光客もちらほらと歩いている。


「はあ、何とか牛頭天王様は引いてくれたようです」


 十二単衣が燃え落ちそうになっている雛御前が安堵のため息を吐いた。


「だけど、何かとんでもない約束してなかった? 雛御前さま」


 カオルは一応、確認のために言ってみた。


「あそこは、ああ言うしかないでしょう、カオル殿。でたらめですが」


 さらっと流したが全くの作り話だったらしい。


「それ困るわ。あんな化け物相手じゃ、勝ち目ないし」


「ただし、清明さまの遺産の話は本当です。それさえ探せば何とかなります!」


 ボロボロの十二単衣で胸を張る雛御前は高らかに宣言した。

 カオルも打つ手がないので、とりあえず、この話に一縷の望みを賭けるしかないと思った。


 悪童丸も何とか身体を動かせるようになっていた。

 犬神、猫鬼は不可視モードで心配そうに雛御前に従っていた。


「カオルお姉ちゃん、お腹すいたよ」


 悪童丸の第一声である。

 

「あんた、さっき食べたばかりでしょう!」


 開いた口が塞がらなかったが、悪童丸の無事と命を拾ったことで少しほっとしていた。

 

「カオル殿、まあ、夜食にラーメンでも食べにいきましょうか」


 呪術で十二単衣を真っ新に再生した雛御前は明るく笑った。

 式神でもラーメン食べるんだと思うカオルであった。



牛頭天王のまさかの反原発、政権批判が飛び出しました。

が、この物語はあくまでフィクションです。


都市伝説ですがこんな話も。


8.6秒バズーカーの「ラッスンゴレライ」は原爆が元? こじつけかと思いきや徐々に真実味が増す

http://dmm-news.com/article/938025/



原発はまじでヤバい感じがしますが……。


福島原発:1号機格納容器内にロボット投入、途中停止 - 毎日新聞

http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20150411k0000m040111000c.html


それにしても寒い! 冬が舞い戻ったような寒さだ。どうやら、日本列島には大変な気象状況が発生しているようだ。かつてない異常事態を想定すべき状況にあるような気がする。「核の冬」とか…。(飯山一郎)

http://grnba.com/iiyama/index.html#ss04101



【速報】冷温停止基準点の80℃を4日間超え続けている福島第一原発2号機 ライブ映像で煙モクモク [転載禁止]©http://2ch.net

http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news/1428503089/


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ