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六角の花   作者: フミ
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終わりの始まり

「お客さんみたいだねぇあたしが行こうかぇ」


「大丈夫イヨ姉様

ゲンがお客様の相手してくれる事になってるから」


「そうかぇ

色男の旦那が人前に出るのはまだまだ先かぇ?

よその職人引き抜いて亭主にしちまうなんてリッカもやるねぇ」


「うふふ やるでしょ?わたしも」


どうしても顔を合わさなくてはならない部外者には

アキヨリはよその工房から引き抜いた職人で

ほとぼりが冷めるまで人前に出られない事になっていた


「リ…リッカ…二ザ…モン…ニザエモモン…きた」


ゲンの声は襖の向こう側からだ


「ゲンお疲れ様

客間にお通しして わたしはお茶の用意してから行くから

イヨ姉様ごめんなさいせっかく診て下さるって時にお客様が…」


「いいよ いいよ

どうせ赤ん坊が産まれて少し落ち着くまでいるつもりだから」


「本当に忙しいというのにオタマの時もつきっきりで看て下さって」


「いいんだよゴクちゃんには世話になったんだぁ」


リッカがお茶の用意して客間に行くと誰もいない

おかしいと思い外に出ると門のところにはまだゲンと二ザエモンの姿が見えた


「ニザエモン様お久しぶりです

ゲンどうしたの?

客間に通してって言ったじゃない」


「いや、いや、こちらの事情なのですよ

お久しぶりですなあリッカさん

実はお客様をお連れしていまして

お堅いお方で主の許しを得ない内は門をくぐらぬと仰るので

おやおやお子様は順調ですかな?

大変な時期に突然お邪魔して申し訳ありません」


いったいニザエモンは誰を連れて来たのだろう

リッカは不安になり立ちはだかるようにニザエモンの前に進んだ

するとニザエモンの後ろからぬっと大きな影が現れリッカと太陽の間に入り陽光を遮った

逆光になりリッカにはその人物の姿はまだ只の影にしか見えない

影は言った


「突然の訪問お許し下さい

ナリカワ ヒデカツと申す者です

この度こちらの作品を拝見させて頂き大変感服いたしました

是非制作した職人にお会いしたくなり不作法を承知でお伺いした所存です」


ナリカワ ヒデカツ

確かアキヨリからは旧知の間柄と聞いた大名の御曹子だ

アキヨリの所在を突き止めてやって来たのか

それとも偶然か

リッカは硬直した自分の判断がこれからのアキヨリの運命を大きく左右する

すぐには口を開けずにいた


「リッカさんナリカワ様は多額の援助を申し出て下さっております

ゴクラクサイとの約束ですが私どもも余りに安価でここの作品を買い取らせて頂いておりますので

気が引けていたのですよ

どうでしょうナリカワ様の後ろ盾があればもっとこの工房もより良い方向に持って行けるのではないでしょうかな?」


「シラセ リッカと申します

父ゴクラクサイの跡を継いでこの工房を切り盛りしております

大変申し訳ありませんが父の遺言に従い

これ以上は望んておりません

我が工房の作品を評価して頂いたことは大変感謝しております

こんな山奥までご足労でございます

お茶の用意が整って御座います

どうぞこちらに…」


リッカは眩しそうに自分の目にかざした手を屋敷の方に導くように差し出した


ヒデカツは初めてリッカの容姿を目の当たりにした

そして思考の停止を余儀無くされた


「リッカさんそう仰らずに

まあ お茶を頂きながらゆっくりお話しいたしますか

ヒデカツ様およばれいたしましょう…

ヒデカツ様?」


「はっ?ああ…ミクリヤ殿それには及びません

用件はここで済ませます」


ニザエモンに促されヒデカツは本来の目的に立ち返った

彼はリッカの屋敷に到る途中確信していた

その確信の根拠は地面に残された巨大な蹄の後だ


「アキヨリ!おるのであろう⁈

ヒデカツだ!話がしたい出て来てくれ!」


やまびこがいく重にも重なる大声にリッカは凍り付いた

ニザエモンはアキヨリとはどこのアキヨリだと面食らったが

シラセ家とシジマ家の間柄

そしてナリカワ家とシジマ家の間柄をすぐさま思い出し


「下手を打った!」


そう呟き舌打ちをした


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