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六角の花   作者: フミ
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呪いの言葉と密かな涙

呪いの言葉であった

アキヨリの巻き物には彼が生まれてから今日までの怨み辛みが羅列されていた

まずアキヨリを産んて間も無く命を落とした母の事が記されていた

母の縁者達はアキヨリに一族に伝わる火の力があると気づくと

アキヨリの母が死んだのはアキヨリの力のせいだと彼を鬼子と呼び忌み嫌った

さらに物心ついた頃 流行病で熱を出し

そのせいで力を暴走させ小火騒ぎを起こした事があり

その時母の縁者やその支持者達はアキヨリを殺してしまえと騒ぎ出したとも書いてあった


その先も延々と続いていたがリッカにはもう読む心の力は残ってはいなかった


「アキヨリ様

お辛かったでしょう

でもこんな物に記すくらいなら

わたしに話して下さい

あなた一人が辛いのは耐えられない!」


「ちょっと待て

気持ちは嬉しいがこれは術の為の巻き物なんだ

いろいろあったが良い出会いに沢山恵まれて

とっくにこれらの出来事の心の置き場は決まっているのだ」


「意味が分からない!」


「順を追って話す

まずこの巻き物には俺の火を操る力が封じ込めてある

こんな事を言っても想像出来ないかもしれないが

太刀の鞘から出した粉は極小の生物達なんだ

米の栄養で何倍にも増やしてある

酒もそうなんだよ

米を酒に変えるのは目に見えないくらい小さい生物の力なんだ

違うのは俺の墨に入っている極小の生物は俺の脳の中をそのまま移し取ってくれるんだ


本当に火を操っているように

目で見たように

耳で聞いたように

鼻で嗅いだように

頭の中で想像しながら文字なり絵なり図形を書き記すと頭の中をそっくり移すことが出来るんだ」


「なんとなく分かりますが

なぜそんな お辛い事を思い出すような事を書くのです」


「あーこれはな

書く内容は人それぞれなんだ

さっき言ったように過去には絵を描いて巻き物を作ったご先祖もいたらしい

俺もいろいろ試したんだが

これが一番上手く行く

呪いの文と書いて呪文と言うが

過去にも怨み辛みを綴った巻き物を専らとする ご先祖が多かったらしい

だから巻き物に書いてある事と巻き物を使った時の効果は全く違うのが多くて

書いた本人にしか分からないんだ」


「難しい…

もう一つ質問です

なぜそんな物が必要なんです」


「戦があったばかりだ

落ち武者がこの家を襲いに来るとも限らん

巻き物があれば火で攻撃しながら俺自身も戦える

百や二百の相手なら物の数ではない」


「その時はわたしが皆を守ります

過剰な武装は災いを呼ぶとお父様は言ってました

そんな事もうやめて下さい」


「リッカが俺を守ってくれるのか?

あはは!それは頼もしい

見つかってしまってばつが悪いしもうやめるか」


「良かった

あなたはもう戦いの事は考えないで欲しいのです」


「ありがとう

もう考えない約束する

だが焼き物を焼く時にも使えるんじゃないか?」


「うん…そうなんだけど

あの…やっぱりなんでもない」


リッカは巻き物の文面が忘れられず

アキヨリが失ったものと同じくらいのものを与えたい受け取って貰いたいと決心していたが

その失ったものの大きさ深さにたじろぐような気持ちになってしまった

涙が込み上げて来たがアキヨリを可哀想とは思いたくない

またそう思っていると思われたくない

自分の心のかんぬきを外したのは部屋にもどってからであった



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