表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
六角の花   作者: フミ
77/788

一つの心 一人の心

「何を驚いた顔をしているアキヨリ

驚くのは俺の方だろう

お前もジョスイを追っているのだろう?

険しい道を進み追手をまく算段を見抜いて先回りしたのだろう?」


ナリカワ ヒデカツはサナガ ジョスイを打ち破ったナリカワ ヒデミツの三男である

歳はアキヨリの二歳年上であり

境遇も年齢も近いものがあり

シジマ家ナリカワ家が共同して都周辺の諸勢力を打ち倒して来た経緯から普段から良く行動を共にしていた


「ああ そんなところだ

だが ヤツも観念したのか崖に身を投げおった」


咄嗟に辻褄を合わせようとしたが動揺していたのか

アキヨリは良くホウライ山の地形を把握していないにも関わらず崖を持ち出してしまい

崖などあったかとヒデカツがどう反応するかと息を飲んだ


「裏切り者であるが腹を切れん侍とは惨めなものだ

少し下流に崖になっている所があったな

川の流れは早い首を上げるのは諦めた方が良さそうだ」


伊勢海老を連想させる凝った創りの甲冑は

陽光を反射しヒデカツの人生を象徴するかのように煌めいた

引き連れた十人の共の者も

そこいらの大名でも用意出来る物では無い立派な甲冑を身に付けている


「それよりアキヨリどこへ向かう積りだ

今迄仇討ちの機を狙っていたのだろう

トミナリ城に来い

生き残ったシジマの兵達もお前が生きていると知ったらさぞ喜ぶだろう」


ヒデカツは頭も切れる 腕も立つ

人間性も申し分ない

しかし育ちが良すぎる為か人の悪意というものに全くの無頓着である

ヒデカツの父ヒデミツはジョスイを打ち破り

主君ミナヅネの仇を討った事により天下人の第一候補であることは揺るぎ無い事実だ

もう彼に敵対出来る勢力など日の本には存在しないだろう

各々の家を第一とする大名家など少ないにこした事はないのだ

そんなところに今更アキヨリが現れれば歓迎される筈は無い

新な火種以外の何物でも無い

生き残ったシジマの家臣達はシジマ家が日の本を守った自負があるアキヨリを天下人へと望むだろう

それは折角生き残った者達の死を意味する

アキマサが亡き今誰が上に立とうがアキヨリには興味が無いのだ


「麓の小さな集落にかくまってもらっていた

これから暫くは落武者が野武士となり彼等の生活も危ぶまれる

恩返しがしたい

時期を見て必ずトミナリ城に行く

それまで俺が生きている事他言無用と願いたい

この通りだ!」


「そんな事はお前が指図してやらせればいいだろう

だがお前らしい

お前のそういう所は俺を嬉しい明るい気持ちにさせてくれる

分かったお前の事は俺の胸にしまっておく

お前らも分かったな!

俺は口の軽いヤツは納豆より嫌いだ!」


「すまん!

生き残った者達の事よろしく頼む


アキヨリはアクヤから降り膝を付き頭を下げた


「やめろ!俺とお前の仲を何と思っている

アキマサ殿も手厚く葬らせてもらう

何も心配するな

では俺は行くぞさらばだ!親友!」


「すまない さらばだ」


ヒデカツが去った後もアキヨリはその場に膝まづいたままである

やっと自らの脳漿を自らの為に使える

ありったけの兄達家臣達の記憶を元に彼等の最後の戦いに思いを巡らせた


「兄上ぇぇ!兄者ぁぁ!

何故俺はあの戦地にいない!

天よ!何故俺を生きながらえさせる!

何の為に大名家に生まれた!

何の為に技を磨いた!

何の為にぃぃぃぃ!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ