邂逅
「最早貴様とて毒にも薬にもなるまい
立て」
ジョスイの襟首を掴んでアキヨリは無理やり立ち上がらせた
側近達はもう逃げの体勢に入っていた為何の反応も出来ず終いである
「ふざけんじゃねぇつってんだろ!
てめえでやっちまった事を敵にケツ拭かせたような俺が
この後どうやって生きて行けってんだよ!
後生だ!殺してくれ!
知ってんだろ俺ぁ腹切れねぇんだよ!」
「生きていれば必ず何かある
お前にしか出来ない事が必ずある
兄上、兄者、シジマの者達の命に見合うものを見つけてみろ
貴様なんぞ殺した所で何の埋め合わせにもならん
生きて苦しめそれが俺の仇討ちだ」
ジョスイの命とアキマサそしてシジマの勇者達の崇高な戦いは
アキヨリには全く別次元のものに感じられた
ジョスイを殺して仇討ちとすればアキマサ達の戦いが穢されるとさえ思えた
「鎮西の大名オオトモはキリシタンだったな
かくまって貰えるかもしれん
辿り付いてみろ
さらばだ」
襟首を掴んだ手でそのままジョスイの陣羽織を乱暴に剥ぎ取り
自ら袖を通しアクヤに跨るとアキヨリは振り向きもせず
リッカの屋敷とは反対方向に走り出した
「ちくしょう!ちくしょう!
てめえはどうなんだよ!
何か見つけたとでも言うのかよ!
もう誰も殺めんなんつったって
俺達の手は血で真っ赤なんだよ!
ちくしょう‼
生きてやるとも!後悔すんなよ
若大将
あばよ!」
鎮西すなわち九州に行くよう促されたジョスイは西へと姿を消した
「上手く行ったな
これでリッカの屋敷の方には誰も行くまい
あーあーどんな感じだったかな
やべぇ!もう追手が来やがった!
」
ジョスイの声真似が自分でも上手かったと思えたアキヨリは口を片方だけ吊り上げた
策に長けてしまった自分を自嘲しているのだ
「馬だ!馬に乗ってるぞ!急げ!逃がすな!」
「落武者狩りに廻される者など能無しと相場が決まっている
おかげで助かったな」
アクヤの速度を追手が見失わないよう付かず離れず
下り坂を十里程走ると窪地に入った
追手達の疲労は明らかに見てとれるようになっている
頃合いとばかりに四方を上り坂に囲まれた
窪地の一番険しい上り坂を全速で上りきると
アキヨリの姿は青息吐息で上り坂に飲み込まれた追手には影も形も見えなくなった
「帰ろう俺には帰る場所がある」
陣羽織を脱ぎ捨てると只方角だけを頼りに帰路を急いだ
リヨウは目立つので先に帰らせていたのだ
だがそれが仇となった
冬のあの日激流となっていた川の上流と思える沢に出て
帰り道を見つけほっとしたその時
「アキヨリではないか!
生きていたのか!良かった!
一体今迄どこにいたのだ」
「ナリカワ ヒデカツ⁉」
旧知の友人に鉢合わせしてしまったのだ




