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六角の花   作者: フミ
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ヒゲとプロポーズ

登窯に再び火が入った

崩れた壁を修繕した真新しい煉瓦の色と

窯内を確認する為の開口が二倍の大きさになった事が以前と変わったところである


今回窯に入れられたものは色を付けられた十二体

リッカの新作の茶器五十

皆で作った注文を受けた同じ形の茶碗や水差し皿が三百程

そしてアキマサとイエナガの面

各一個


「アキヨリ様!準備はよろしいですか⁈」


「準備万端整って御座る

このアキヨリがいるからには一つの割れも出しませぬ!

親方様なんなりとお申し付け下され!」


度を超えた慇懃さであった

アキヨリがリッカに対する態度は最早長兄や主君と同じである

もちろん仕事を離れればいつもの彼であったが

そうなったのはあの日からである


アキヨリが幼少の頃より長兄アキマサはアキヨリとイエナガには厳しく接してくれた

それが同年代の家臣達から二人が慕われた原因の一つであった

兄弟とはいえ家臣である

立場をわきまえる

それが人の和の基本であるというのがアキヨリの信念であった


もちろんリッカにとっては寂しい以外の何ものでは無かったが聡明な彼女はすぐに理解し

一歩距離を置き仕事も見習いのそれに徹底させた

片時も離れたく無いだがアキヨリに父から受け継いだ全てを受け取ってもらう

それは新たな喜びでもあった


覗き窓に張り付きリッカが指示を出す


「温度が安定するまでは休まず行きますよ!

巳の四、五、辰の二が低い!

後はそのまま!」


「はっ!かしこまって御座る!」


今回新たにアキヨリの操炎術を活かす為窯内を縦横十二に区切り

意思の疎通の一つの手段としていた


全てが順調だった

だが冷却の段になって二人の間に違和感というまでは行かないが異変が生じ始めた


「卯の八、九早過ぎます

もっとゆっくり冷やして…

あれ?…もう良い温度になってる…」


「はっ!かしこまって御座る」


「アキヨリ様?

もしかして作品の様子が分かってるの⁈」


「はっ!出過ぎた事だと思い

親方様の指示が出るまで控えておりました

毎日土を捏ねていたせいか何となくですが分かり申す」


「土の声が聞こえているなら

あなたの自由にやってみて!」


「はっ!」


「アキヨリ様ああ!アキヨリ様

なんて人なの

良かった本当に良かった

やっぱりあなたは生きるべきだった

あなたの本当の役目は沢山の人に感動を与える事です!」


「かたじけのう御座る

親方様お願いが御座る!」


「はい!なんでしょう」


「一つも割れた作品が無かったら

俺と…

俺と祝言を挙げてくれ!」


「はい!はい喜んで

ありがとうございますアキヨリ様ぁぁぁぁぁぁ‼」


だが一つだけアキマサの髭がポキリと折れていた


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