表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
六角の花   作者: フミ
67/788

あの頃のまま

「かわいい

この子の名前なんていうの?」


「名前なんてないよ 昨日拾ったばかりだ 知ってるだろう」


「名前が無いなんて可哀想よ今すぐ決めよう

アキヨリちゃんの名前から一文字取ったらどうかなあ?」


「ならばヨリがいい

始めて幕府を開いたヨリトモ様から頂いたのだ俺の誇りだ

リッカからも一文字欲しい」


「だっら リ がいい」


「それでは ヨリリになってしまうだろう

そうだリを先にもってきて リヨ というのはどうだ?」


「いいんだけど…」


「おかしいか?」


「何か足りない

そうね この子はまだ赤ちゃんだから ア リヨア 違うなぁ

ひよこだから ヒ リヨヒ 何か弱そうねぇ」


「生まれたての ウ でリヨウだ!」


「うふふうふふ

生まれたてっておかしい

でもいい名前 リヨウちゃん 早く大きくなってね」


「嫌でも大きくなるさ

千年鷹の雛だ こいつの親は俺よりずっと大きい」


「ほんとに?

リヨウちゃんが大きくなったら…

アキヨリちゃんが大人になったら…

あの…」


「うん 迎えに来る きっとだ

ありがとうリッカ

もう恐いことはなくなった

立派に初陣を務めてくる」


アキヨリはリッカのくれた白い玉の御守りを握り締めくしゃくしゃの顔で微笑んだ


「ずっと待ってるアキの国ホウライ山だよ

忘れないでねアキヨリのアキだからね」


リッカの涙声はアキヨリの胸にぶつけられるように放たれた


「忘れない さらばだ」


「さよなら らよなら」


リヨウの小さな目には二人の滲んだ瞳が交互に映るのだった



子供の拳ほどあるリヨウの巨大な真円に近いまん丸な目が

縁台に腰掛けるアキヨリとリッカの顔を交互に覗き込んでいる

人間の仕草で言うと小首を傾げ何かたずねているようだ


思い出に二人が浸っている間

リヨウは何時の間にか目の前までやって来ていた


「リヨウちゃん本当に大きくなったのね」


「おい!リッカあんまりリヨウの目を見るなよ

鷹の本能で目玉をつつかれぞ!」


「大丈夫よね〜リヨウちゃん」


リヨウは軽く羽ばたきアキヨリとリッカの間に無理やり体をねじ込み

すました顔で二人の間に座って遠くを見ている


「うふふ 私達に妬いてるのかしら?

まるでアキヨリ様と私のかわいい坊やみたい」


「んがっ!リ!リッカ!なんてことを言うのだ!」


「だってそうじゃないですか

この子が巣から落ちて最初に見た男性はアキヨリ様で女性は私

鳥の雛は最初に見た自分より大きなものを親と思うのでしょう?」


「そっ!そういう意味だったか

ならそうかも知れない

しかし親鳥をもう既に見ていたかも知れないぞ」


「うふふ

さあアキヨリ様今日から釉薬を使って十二人の勇者様方の絵付け

つまり色を付けます

お手伝い願いますよ

我が工房は居候を三人も置いておく余裕はありませんから

リヨウちゃんとアクヤちゃんの分まで働いて頂きます」


「願ってもない!俺に仕事を教えてくれ

いや!教えてくだされ!」


「おやめ下さいアキヨリ様!」


深々と頭を下げるアキヨリの肩を無理に押し上げようとしたが石のように重くリッカには到底無理である


「もう!律義すぎます!」


「すまない これ以外の人への接し方を知らん」


アキヨリはまだ四十五度のままだ


「でもね そんなあなた様が大好き

さっきのも そういう意味じゃありませんから

うふふうふふ」


リッカは工房へ跳ねるように駆けて行った

アキヨリは四十五度のまま顔を真っ赤にして取り残された


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ