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六角の花   作者: フミ
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躊躇い

そのけたたましい音を聞いて快く感じる者は

よほどの変わり者でない限りいないと言っていいだろう


しかしその音を聞いてアキヨリは 安堵感

焦燥感

悲しみ

怒りが

ごちゃ混ぜになって心の中に渦巻き

居ても立っても居られなくなり

今すぐ御輿に駆け寄りたい強い衝動にかられた


多くの人間には警告音としかとらえられないだろう

だがその音はアキヨリにとっては 助けを求める(声)だった


しかし思いとどまった

今そうしてしまったら生きて戻る術が無い

思いとどまる理由はもう一つあった

助けを求める声に応じ 尚且つにこの軍勢に一泡吹かせる策を思いついたのだ


「ひきあげよう この軍勢の正体にも大体見当がついた」


奥歯を噛み締め皆に告げた


輸送部隊に紛れていたので兵糧や装備品の量は把握出来ていた

最低限の目的は達成したと言えるだろう

鉄砲など重い装備品は兵に持たせず全て輸送部隊に運ばせているようだ

行軍速度と兵の疲労を考慮してのことだろう

目的地に到着しだい軍事行動を行おうとしているのが伺える


だがすんなり引き上げようとするアキヨリに家臣達はいささか拍子抜けしていた

皆アキヨリの心情は理解していた

彼が助けを求める声に応じ窮地に立たされたならば

命を投げ出して護り通し生還さる

そんな覚悟は遠の昔にできていた


幾度も幾度もアキヨリに助けられてきた

戦場では勿論のこと 怪我をすれば完治するまで いちいち気にかけてくれたし

戦で近しい者を失えば一緒になって泣いてくれた

暴発寸前の彼等であったが

アキヨリの顔を両の目の視線で突き刺す限りその表情からは絶望は伺えなかった

今は引き上げるべきなのだろう

皆納得せざるえなかった


潜入には輸送部隊を利用できたが

脱出するには皆寄り集まっていたら当然怪しまれる

皆散りじりになり すっかり日の落ちた野営地を抜け出すのは彼らにとっては容易なことだった


皆が落ち合いそれぞれ見聞きしたものを総合すれば ほぼこの軍勢の全容は掴めるだろう


アキヨリは抜け出す際 見知った顔をいくつか見かけ

自分の予想した軍勢の正体に確信をもった

同時にこの軍勢は敵であることにも確信をもった


主君オアイの安否が気になったが今は思考の埒外に置かざるを得ない


居残り組が待つ古墳に着くまでには皆と合流できた

皆無事だった


皆の顔を見て緊張が緩んだのか祠の前まで辿り着いた時にアキヨリは へたり込んでしまい押し殺していたものを吐き出さずには居られなくなってしまった


「リヨウ…リヨウ生きていてくれた」



つづく




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